以来、約50年にわたって鈴木さんは『きょうの料理』の“顔”に。後藤繁榮アナウンサーとの軽妙な掛け合いも人気となり、旬を生かした日本料理の基本を伝える“登紀子ばぁば”の料理は、時短・手抜き料理が流行った時代においても、不動の人気を誇った。なかでも「おせち料理」は何度も再放送され、最高視聴率を記録したほどである。2015年には、和食文化の継承に尽力した功績から「放送大賞」を受賞している。

「鈴木登紀子料理教室」を続けるかたわら、テレビ、雑誌等で“日本の家庭料理”にこだわった和食を伝え続け、著書は60冊を超える。2020年11月に発売された『誰も教えなくなった、料理きほんのき』(小学館刊)が遺作となった。

「食べることは生きること。私の料理が家族の命を育てていると思ったら、どうして疎かにできましょうか」が口癖。毎月10日間にわたって開催していた料理教室でも、手をきちんとかけた家庭料理の大切さを2019年まで伝え続けた。

長年続けた料理教室は2019年末まで続いた(撮影/近藤篤)

長年続けた料理教室は2019年末まで続いた(撮影/近藤篤)

お品書きはいつも筆の手書き(写真/近藤篤)

お品書きはいつも筆の手書き(写真/近藤篤)

 最後の“収録”となったのは、昨年11月初旬、遺作となった『誰も教えなくなった、料理きほんのき』のPR用のボイスメッセージ。打ち合わせも台本もなきままの収録となったが、「ばぁばでございます」から始まり計15分ほど、「言い忘れたことないかしら」と言いながら、スラスラと明瞭な思いを語っている。

「鈴木先生とは15年ほどのおつき合いでしたが、撮影時には必ず、スタッフのために撮影用料理とは別に、炊きたてのご飯とおかずを用意してくださいました。あるとき、校了紙を届けるために夜更けに恐縮しながらご自宅にお伺いすると、『あり合わせて申し訳ないけれど』と、焼きたての鮭が入ったお弁当を持たせていただき、思わず泣きそうになったことがあります。きっといまごろは、最愛のパパさんとの再会を楽しんでいらっしゃるのだろうな……と、鈴木先生の笑顔を思い浮かべながら、心よりご冥福をお祈りいたします」(『誰も教えなくなった、料理きほんのき』担当記者/神史子)

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