芸能

『大コメ騒動』室井滋の“おばばぶり”に樹木希林を見た

『大コメ騒動』(公式HPより)

『大コメ騒動』に出演する室井滋(写真左、公式HPより)

 井上真央主演の映画『大コメ騒動』が話題を集めている。特に、“清んさのおばば”を演じる室井滋(62才)の存在感が際立っている。コラムニストのペリー荻野さんが室井の演技について解説する。

 * * *
 先日公開された映画『大コメ騒動』は、第一次大戦の好景気に沸く1918(大正7)年、富山の小さな漁師町で米の急騰に怒ったおかか(女房)たちが「家族に腹いっぱい食べさせたい!」と起こした「米騒動」を痛快に描く。

 監督は富山出身の『超高速!参勤交代』の本木克英。室井滋、立川志の輔、西村まさ彦、柴田理恵、左時枝など富山出身キャストも多数出演。米米CLUBが書き下ろした主題歌『愛を米て』も話題だ。

 私も早速見た。いよいよ行動に出た大勢のおかかたちが、砂浜を走って米俵やそれを運び出す男たちに体当たりする。その先頭に立つのが、真っ黒に日焼けした主演の井上真央、すぐ後ろでしゃもじ片手にバシバシと戦っているのが鈴木砂羽、みんな縄は投げるわ、棒は振り回すわ、地元エキストラの女性たちも参加して、もう大変。個人的には「米騒動」については教科書に載っていたな~というくらいの知識で、これが「井戸端から社会を変えた」「日本史上初めて女性が起こした市民運動」と言われていることや、この騒動が新聞に「女一揆」と大きく報じられて全国に広まったということ、その結末も含めて、「そうだったのか」と驚くことばかりであった。

 そんな中、私が注目したのは、室井滋のおばばぶりだ。室井が演じるのは、おかかたちのリーダーである“清んさのおばば”。おばばは、出稼ぎに出た夫を待ちながら毎日60キロ(!)もの米俵を担いで働くおかかたちに頼りにされる存在だ。米の値段を吊り上げる米屋にも堂々と苦情を言い放ち、大事な米の運び出し阻止のため、おかかたちと動く。合言葉は「コメを旅に出すなー!!」である。ぼーぼーの白髪頭にごつごつした日焼け顔、鋭い眼光にへの字口。なかなかに迫力があるおばばだ。

 室井のおばばといえば、2007年の映画『ゲゲゲの鬼太郎』の砂かけ婆も印象深い。この映画も本木監督、井上真央出演作である。灰色の着物にどろーんとのびた白髪、目の周りには真っ黒いクマができた砂かけ婆、いざとなると爪の伸びた手から砂をかけて目つぶしする妖怪だ。だが、比べてみると砂かけ婆よりも清んさのおばばのほうがインパクトがある感じが。人間なのに…。資料によれば、幼いころ、家の近所に清んさのおばばに相当する人がいて、室井はその姿を見ただけで泣いていたらしい。おばばがリアルでイキイキして見えるのは、実体験があったからなのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン