そこで気づいたのは、“熱中すること”の大切さだった。
「孫と遊ぶと、面白いことをすぐに見つけてくるのね。棒切れひとつ持たせただけでずっと遊んでる(笑い)。子供っていろんな遊びを見つけて夢中になれる。でも、それは大人もそうだと思うの。何でもいいからやるといいんじゃないかしら。
私はそれがお裁縫だったり、読書だったり、ギターだったりお料理だったり。夢中になれることじゃなくても、原稿書きの気分が乗らないときは家事をする。やらなくていい洗濯をしてみたり、掃除をやたら丁寧にやってみたり。気持ちがそこに向かないときは違うことをしてみるといいのよ。“おもちゃ”をいっぱい持ってるといいんじゃないかな」
子供の頃に洋裁をしていた母を手伝っていたこともあり、自粛期間中は得意な洋裁でクローゼットに眠っていた服やステージ衣装をリメイクした。
「朝から晩まで針をチクチクやって、お風呂に入っていても、『あの服とあの服を組み合わせると素敵だわ』と思いついたら、裸のまんま出てきてやってみるのよ。これ、ひとり暮らしだからできることよね(笑い)」
【プロフィール】
加藤登紀子(かとう・ときこ)/1943年、旧満州ハルビン生まれ。1965年、東京大学在学中に歌手デビューし、『赤い風船』でレコード大賞新人賞受賞。『百万本のバラ』『愛の讃歌』などヒット曲多数。2020年に歌手生活55周年を迎えた。女優や声優としても幅広く活躍し、地球環境問題にも取り組んでいる。
取材・文/伏見友里 撮影/関谷智幸
※女性セブン2021年1月28日号