各ホールは2020年4月1日からの改正健康増進法に対応するため、大掛かりな空調設備をすでに導入していた。これもコロナ対策に功を奏したのかもしれない。また業界挙げてバッシングに対してきめ細かな説明とサービスに専念した。確かに西口さんの言う通り、ホールは日本でも有数の安全度かもしれない。
「まして黙って台を見つめて一人黙々と打つパチンコに時短呼びかけですよ。クラスターの原因の多くが飛沫であることは明白でしょう、本当におかしな話です」
これからもホールでクラスターなんか出してやるもんか
これが分断というものか、そもそも時短の名目で夜を対象にするエビデンスは何なのか、例えば筆者は都内ファミレスのお昼を取材したが、8人の団体家族が子どもを中心に盛り上がり、どこも家族連れ、作業員姿の団体さんが老いも若きもゲラゲラ笑いながら入店して来る恐ろしい店だった。とくに目立った某大手工場の人たちは複数人で楽しそうにランチを食べていた。会社は通達を出していないのか、聞く耳を持たないのか。家族連れは3世代7人、大人は安ワインで乾杯。しかし店は悪くない。徹底した管理をしているのは接客からしてわかる。表に出ない好き勝手な市井の一般人の大多数がバレるわけないとやっている。ショッピングモールも歓楽街も、行ってみればどれだけそうした連中が集団でウロウロしているか一目瞭然、そのコストとリスクは店舗側、エッセンシャルワーカーのみなさんが引き受けている。これが今の日本だ。いつの間にやら30万人以上の罹患者を出して、それでも政府要人はパーティーに集う。悔しいが、上から下までそういう国だ。
「大手は大変です。大手は協力金なんてあっても人件費どころか電気代にもなりません。それはファミレスもそうでしょう。ランチでそんな状態でも従業員を養っていかなきゃいけない。ホールだって、とくに都心は大変だと思いますよ」
コロナ禍、大手はどこも厳しい。営業時間短縮に応じた飲食店に支払う協力金は1日当たり上限6万円に増えたが、大手にははした金でも、小規模零細はほくそ笑んでいる。実際、都下私鉄沿線の小さな飲み屋の某オヤジは「特需」「時短バブル」と大喜び。「純利で6万円なんて夢のよう」「車買い換えるよ」。みんな自分の利得には文句を言わない。この金は税金で、何ももらえないのはパチンコ店やゲーセン、映画館だけじゃない。サラリーマンも大半はもらえない。時短協力金のために東京都は1528億円の補正予算を、大阪府は当該負担だけで最大350億円を見込んでいる。これはすべて税金だ。さしたる節税のすべもないサラリーマンは来たるべき大増税のみ被ることになるだろう。
「でもね、ホールとしてはお客様だけを向いていればいいですから、粛々と営業するだけです。お客様がすべてです。夜8時は無茶ですが、少しならうちは協力するつもりです」
それはわかるが今後、万が一、休業要請になったらどうするのか。
「それは……覚悟するしかないだろう」
いつもの達観した西口さんに戻る。どこも限界が近づいている。