坂東:いまは本当にそう思います。子供がいなかった叔母は私を頼りにしていましたが、死ぬときのことなんて縁起が悪いので、叔母の生前にほとんど話題にしませんでした。それでも自分に置き換えたら、意思表示をしておくことが大切だと思います。私自身はできるだけ平穏死をめざして、延命措置を辞退するよう家族に意思表示をしています。
小笠原:家族や医療関係者などと、延命治療の是非やどこで最期を迎えたいかなどをあらかじめ語り合うことを「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)=人生会議」といいます。超高齢化社会ではACPがますます重要になっていますが、坂東さんはそれを実践されているのですね。
坂東:本当にコロナは死を考えるきっかけになりました。「太陽と死は直接見るのが怖い」というけれど、これだけ超高齢化で90代や80代が増える中、どういうふうに亡くなりたいかを考えておくべきです。同じ日が明日もまた来るとは限らないという、当たり前のことをもう一回思い出す必要があります。
【プロフィール】
坂東眞理子(ばんどう・まりこ)/1946年富山県生まれ。昭和女子大学理事長・総長。1969年に総理府入省。男女共同参画室長、埼玉県副知事などを経て、1998年、女性初の総領事になる。2001年、内閣府初代男女共同参画局長を務め退官。330万部を超える大ベストセラーになった『女性の品格』ほか著書多数。
小笠原文雄(おがさわら・ぶんゆう)/1948年岐阜県生まれ。小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニック院長。循環器専門医・在宅専門医。日本在宅ホスピス協会会長。名古屋大学医学部特任准教授。昨年、第16回ヘルシー・ソサエティ賞医師部門を受賞。在宅看取りを1500人以上、ひとり暮らしの看取りを99人経験。
取材・構成/池田道大 撮影/政川慎治
※女性セブン2021年1月28日号