式典は、最も美しい場面に変わった。レディ・ガガがアメリカ国歌を歌い、ジェニファー・ロペスが「わが祖国」を歌った。二人とも非の打ちどころがなかった。
そして、いよいよバイデン氏の就任演説である。
「今日はアメリカの日であり、民主主義の日だ。民主主義が勝利を収めた」と切り出し、「アメリカの分断は深く現実のものだ。私は国民と国家の結束に全身全霊を捧げる。すべての国民に参加してほしい」と強調した。
「共和党と民主党、地方と都市、保守とリベラルという意味のない争いをやめなければならない。互いに心を開けばできるはずだ。私はすべての国民の大統領になると誓う。私を支持してくれた人だけでなく、支持しなかった人のためにも同じく懸命に闘う」
と、連帯を呼びかけた。そして、「各国との同盟を修復し、再び世界に関与する」と、国際協調を重視する姿勢を示した。ピーター親娘はもちろん、日本人である筆者にとってもホッとする言葉である。
演説終盤には、「今は試練の時だ。民主主義と真実への攻撃、猛威を振るうウイルス、格拡大する格差、人種差別、気候変動に直面している。すべてに同時に向き合い、かつてない大きな責任を果たさなければならない」と指摘した。
全体としては良い内容だったと感じた。ただし、女性やマイノリティを登用したことを強調しすぎる点は気になる。差別のない国を作るというなら、それは強調すべきことではないはずだ。その後、バイデン新大統領は、新型ウイルス対策や気候変動、移民政策などに関する文書に署名し、早速トランプ前政権からの転換に乗り出した。当然、トランプ支持者の反発は強く、しばらくは苦戦を強いられるだろう。