「ざっくり言うと、1月分の補償が満額入ってくれば、3店合計で普段より180万円くらい収入が増えます。一番売り上げが多い店舗の例ですと、通常営業していても1日の売り上げは4万円くらいです。そのための仕入れやおしぼりなどの経費が約2万円。利幅は同業他社より小さいですね。それに家賃や光熱水費などの費用が月に35万円くらい。加えて、アルバイトの従業員に月給を20万~30万円くらい払っています。つまり、1か月の粗利益が2万円×30日で60万円あっても、家賃などの経費と給料でだいたいなくなってしまうというのがこれまでの経営でした。
今は時短営業で1日の売り上げは5000円程度にまで減ってしまいましたが、代わりに6万円の補償が入りますから、さきほど言ったくらいの増収になるのです。本当は店を開けないほうが儲かりますが、従業員の働き口を確保する意味で開けています。20時まででも来てくれる常連さんもいますしね」
A氏の経営判断を非難するのは間違っている。この制度下で、店と従業員と顧客との関係を保つために最良の選択をしているだけだ。A氏自身、「一律6万円」という制度はおかしいと感じているという。
「業態にもよるけど、1日の売り上げが10万円以下のお店とか、家賃がそこまで高くないところだったら、時短に応じて補償をもらったほうが普段より儲かってるんじゃないかな。もともと気まぐれで開けたり休んだりしてたところも、ずっと営業してましたと言えば満額もらえるわけでしょう? 飲食店とひとくくりにしているけど、それぞれの事情は全然違いますから、一律というのはおかしいですよね」
A氏は増収になった分は、「これからコロナがどうなるかわからないし、いつまでも補償が出るとも思えないから貯金します」という。それもまた、「補償は貯金に回ったからもう出さない」と言い出しかねないのが、国民の生活を見ようとしない現政権の恐ろしさだ。