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「押してもダメなら引いてごらん」認知症の母が見せた名演技

コロナ禍だからこそケアマネジャーとのコミュニケーションは大切

コロナ禍だからこそケアマネジャーとのコミュニケーションは大切(写真はイメージ)

 認知症の母(85才)を支える立場の女性セブンのN記者(56才)が、介護の日々を綴る。認知症の母が見せた“名演技”とは……。

 * * *
 母の担当ケアマネジャーを変えた。母のためにと考え始めたことだったが、私がひとりで怒っては悩み、苦渋の決断だった。ギクシャクしたムードが漂い始めたとき、母がタイミングを図っていたかのように「いつもの話」を始めた。

母渾身の“ボケ”「いじめっ子いませんか?」

「散歩に行こうとしたら、知らない人に話しかけられたの」

 母がこの話を繰り返すようになってから6年以上が経つ。独居で認知症が悪化し、命からがら現在のサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)に転居して以来のことで、話は判で押したようにこう続く。

「“ここ素敵ねー”“お食事も出るの? おいしい?”“お金はいくらくらいかかる?”って聞くの。ここ(サ高住)が気になるみたいね」

 6年も同じパターンで繰り返されているので、次第にわかってきた。要するに母はここが気に入っているのだ。快適で食事も心配ない。娘任せの費用はちょっと気になるが、おおむね満足している。

「でね、“いじめっ子はいませんか?”だって」と大笑い。

 さすがにこれは盛っている。いや、母渾身の“ボケ”だ。私はついイラッとしてしまうが、ヘルパーさんらサ高住のスタッフは、上手に察して何度でも笑ってくれる。そして「“いいところよー”って宣伝しておいたからね」がお決まりの“オチ”である。先日、サ高住の玄関先に「入居相談中」の看板が出ていることに気づいた。もしかしたらあのオチは、サ高住のスタッフへのリップサービスなのか……と勘繰ったりもする。

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