東日本大震災が起きたとき、『日本沈没』を思い起こした人もいたと思います。小松さんの小説が科学的な裏付けや過去の事実をもとに描かれていたからこそ、現実に起き得る事態の警鐘になっているのでしょう。
小松事務所のトイレには、世界各国の歴史が1枚にまとめられた年表が貼ってありました。世界では国が消えたり興ったりを繰り返しているのに、日本はずっと変わらない。そんな日本が沈没したら……。小松さんはトイレで年表を見ながら、まるで“神の視点”から見るように、『日本沈没』の着想を得たんじゃないかと思っています。
【プロフィール】
樋口真嗣(ひぐち・しんじ)/1965年、東京都生まれ。2017年、監督作品『シン・ゴジラ』で日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞を受賞。監督作に『ローラレイ』『日本沈没』など。今年、『シン・ウルトラマン』公開予定。
写真/小松氏のアルバムよりお借りしました
※週刊ポスト2021年2月5日号