ライフ

窪美澄さん 初の新聞連載『ははのれんあい』で描いた家族の姿

過酷な現実を明るく照らす最新作『ははのれんあい』について窪美澄さんに訊いた

過酷な現実を明るく照らす最新作『ははのれんあい』について窪美澄さんに訊いた(撮影/中林香)

【著者インタビュー】窪美澄さん/『ははのれんあい』/KADOKAWA/1700円

【本の内容】
 物静かで優しい夫との間に長男・智晴が誕生。穏やかな義両親が営む婦人服の縫製工場を夫とともに手伝いながら、由紀子は幸せな家庭を築いていた。しかし、双子の次男、三男の誕生で、夫婦の間に齟齬が生まれていく。シングルマザーになり懸命に働く由紀子と、父を失い戸惑いの中で生きる双子の弟たちを、大黒柱として支えるのは成長した智晴。形を変えながらも、いつも互いを支え合い思いやる家族の姿を丁寧に描いた家族小説。

親のことは親のこと 自分の人生を生きようよ、と

 初めての新聞連載は家族小説で、さまざまに形を変える家族の姿を描いた。

 地方都市に暮らす由紀子は、智久と結婚し、三人の子供を産み育て、仕事を見つけ、離婚も経験する。第一部は由紀子の視点から、第二部は、シングルマザーになった由紀子を支えて双子の弟の面倒をみる、長男智晴の視点で描かれる。

 タイトルになっている「ははのれんあい」はもちろんのこと、「ちちのれんあい」「むすこのれんあい」も出てくる。

「家族の話を書いてくださいと言われて、シングルマザーの話を書こう、と思いました。そこにいたるまでの過程と、離婚後の家庭はどうなっていくのか。小説は智晴が高校生のときで終わっていますけど、物語が終わった後も、子供たちが独立してまた家族の形は変わるはず。そうした先のことも見すえて、家族の形はどんどん変わっていく、ということを意識しながら書きました」(窪さん・以下同)

 両親がいて、子供が二人いて。当たり前のように固定化された家族像とはまったく違うとらえかたの家族の姿がそこにはある。

「家族のメンバーがどんどん変わっていく、というのが自然だと私は思っていて。誰かがインしたら、誰かがアウトする、みたいなことだって起こります。家族の形をかっちり決めすぎると、『家族の外』というものができて、家族以外の人には冷たくなったりもしますよね。
それはどんな局面でも言えることで、極端な例ですけど、あまりにも日本人だけで固まると日本人以外へのヘイトが生まれたりもします。

 人間は、枠組みをきっちり決めすぎない方が、ラクになるんじゃないでしょうか。そう思うのはたぶん、私が家族という枠が決められてしんどい思いをしている人を、これまでにたくさん見てきたからでしょうけど」

 窪さん自身、離婚家庭で育ったという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン