ラーメン店近くの居酒屋、バーでも、一月の上旬は時短営業をしていたものの、開けている店には「客が入る」と知り、営業に転じているというのだ。
「小さな飲食店は特に、習慣で来るお客さんによって支えられています。以前は別のラーメン店に通っていたけど、1回目の緊急事態宣言でうちに来てくれるようになり、今は常連さんになったという方が何人もいるんです」(ラーメン店関係者)
時短営業の要請は受け入れられないが、当然感染対策は徹底して行なっている。店内には、会話などしないで食べてもらうよう「黙食」を進める張り紙がなされ、衝立で一席ごと仕切られた座席には、アルコールスプレーと除菌シートがそれぞれ設置してある。
「従業員の体調管理も昼と夕方、夜3回やっています。従業員やその家族が感染したことはありませんし、客から感染者が出たとか保健所や病院から何かしらの問い合わせがあったとかもない。安心して店を利用していただけていると思います」(ラーメン店関係者)
一日6万円の補償金では足りない、という店舗もあれば、およそ一ヶ月間の時短営業でおよそ180万円を手にできると小躍りする飲食店が存在することを、筆者は以前レポートしていたが「補償金に頼らず営業を続ける」という新たな選択をする店も増え始めているようなのだ。
また、一口に「飲食店」と言っても、立地や客単価によって状況は全く異なり「なぜ一律なのか」と不満の声が上がっている。千葉県出身で都内の居酒屋経営者・隅田洋平さん(仮名・40代)は、この「全く異なる」状況の狭間にいる。
「実家が食堂をやっていて、私も幼い頃から料理が好きでした。5年くらい前に脱サラして神田に店を持ちました。サラリーマン向けの安居酒屋です」(隅田さん)
店は雑居ビルの2階で、家賃は90万円ほど。人件費に加えて、オープン時の改装費用の返済、厨房器具のリース代など、それ以外の固定費を合わせれば一日6万円の時短営業協力金では足りない。夜8時までのお客さんでは、売り上げは以前の一割にも満たない状況で、そもそも、近くの大手企業の多くがリモートワークに移行していて街に人がいないと訴える。そんな隅田さんの懐事情をなんとか支えているのは、千葉の実家である。
「実家の食堂は、一日の売り上げが1万円にも満たず、高齢の両親が趣味でやっているような店。そんな店にも一日6万円出るというのだから、その分を親に前借りして、なんとかやっています。銀行も金を貸してくれないし、店を潰すのなら、なんとか延命して補償金で返せなんて言われた同業者もいる。実家の食堂とうちの補償が『全く同じ』というのは納得がいきませんが、そのおかげで延命させてもらっているし、複雑ですよね」(隅田さん)
政府は、2月7日までとされていた緊急事態を、一ヶ月程度延長する方向で調整を始めたと報じられている。新型コロナウイルスの感染拡大が始まってからもうすぐ一年が経つが「生き延びよう」とする人たちの選択肢がどんどん狭まっていく中、政府にこうした人々の叫びがどれほど届くのか。「期待の声」を口にする者は、誰一人としていなくなっている。