コラム
2021.02.23 07:00 マネーポストWEB
急増する「女のおひとりさま」、リスク多い反面、生活満足度が高いワケ

2040年には65才以上の女性の約4人に1人がひとり暮らしになる見込み
令和の時代は、「女性のおひとりさま」がさらに増えていく。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2015年に全国で625万世帯だった65才以上の高齢者のひとり暮らしは、2040年に896万世帯まで増える。これにより、高齢者世帯のうち40%がひとり暮らしになると見込まれる。
【図解】「ひとり暮らし」と「同居」のどちらが生活満足度は高いか、60才以上の1000人に聞き取り調査したデータ
さらに、同じく2040年には、65才以上の女性の約4人に1人がひとり暮らしになると予想される。これは、女性の平均寿命が男性よりも長く、死別によって「おひとりさま」が増えることが影響している。
死別に限らず、生き方が多様化している現代では、離婚や別居婚、生涯未婚など、女性がひとりで生きていく選択肢を取ることは当たり前の生き方の1つとなっている。
高齢女性のひとり暮らしがごく一般的になる一方で、気になるのはさまざまなリスクだ。名古屋学芸大学健康・栄養研究所所長で老年医学が専門の下方浩史さんが指摘する。
「高齢でひとり暮らしになると、日々の活動量が減って心身機能が低下し、寝たきりになる手前の状態を指す『フレイル』になる恐れがあります。私の推計では、2040年に85才以上の女性の2人に1人がフレイルになると予想しています。もしフレイルが進行して寝たきりになったなら、ひとり暮らしを続けることは困難になるでしょう。
また日本の高齢女性は骨が弱く、骨関節疾患で寝たきりになったり、生きがいを失って老人性うつ病になったりする割合が高い。うつ病に関しては、男性は40代くらいで発症する人が多いのですが、女性は60~70代が最も多い。
ほかにも、高齢のひとり暮らしは強盗や詐欺など犯罪の被害にあう危険も。最終的には自宅で誰にも看取られず孤独死する恐れがあります」
認知症も深刻な問題だ。厚生労働省は、2025年に65才以上の5人に1人が認知症になると推計している。
リスクの多さを目の当たりにすると、やっぱり老後は1年でも長く夫と暮らすか、子供や孫と同居、はたまた施設に入った方が幸せに暮らせそうだ──多くの人はそう考えるのではないだろうか。もちろん、長年、家族と同居を続けてきた人の中には、その方が向いている人もいる。
しかし、実際に60才を過ぎてから「女のひとり暮らし」を実践している人たちの話を聞くと、まったく新しい老後が見えてくる。
◆最も満足度が高いのはひとり暮らしをしている65~69才
大阪府門真市にある、つじかわ耳鼻咽喉科院長の辻川覚志さんが2012~2014年にかけて60才以上の男女約1000人に聞き取り調査をしたところ、配偶者や子供など家族と同居する人よりも、ひとり暮らしの人の方が、すべての年齢層で日常生活に対する満足度が高いことが明らかになった。
なぜ、ひとり暮らしの高齢者は、家族と同居するより幸せなのか。意外な結果を辻川さんが分析する。
「この結果から読み取れるのは、人生において、ある程度やるべきことをやって一区切りがついたら、その後は自分がやりたいことをがまんせずやる方が満足感を得やすいということです。
誰でも60才くらいまでは家庭や仕事、地域における役割に追われますが、その後は自分が本当にやりたかったことを楽しみたくなる。そのためには、何かと制限の多い同居よりも、自由気ままなひとり暮らしの方が適しています」
調査では、対象となった60~90代の中で、「ひとり暮らしの65~69才」の生活満足度が飛び抜けて高かった。70才以上になると体力的な衰えなどを感じるため満足度が下がることは想像できるが、なぜ、60代前半より後半の方が満足度は高くなるのだろうか。
「昔は60才で定年になりましたが、いまは現役時代が長くなり、60代後半でようやく一区切りという人が増えました。その後、70才を超えると健康面にも金銭面にも不安が増えて満足度が頭打ちになりますが、60代後半は身も心も元気です。このため65~69才のひとり暮らしの満足感がピークになるのでしょう」(辻川さん・以下同)
しかし、前述の通り、高齢のひとり暮らしはリスクが絶えない。加齢とともに体が衰弱すれば、日常生活を維持することも簡単ではなくなる。だが辻川さんは、高齢女性こそ、ひとり暮らしをするべきだと話す。
「人間は使い続けている能力は衰えにくいものです。なんでもひとりで対処するということは、さまざまな能力を使いますから、衰えを予防することに作用します。日常生活を妻に支えてもらった高齢の男性は、ひとり暮らしを始めると苦労する人も多いですが、女性はひとりで生きる能力がもともと高く毎日の家事でトレーニングも積んでいます」
子供世代はというと、「高齢の親はひとりで暮らすより施設が安心」と考えがちだ。確かに、家事を自分でやらなくていいので転倒などのリスクは減り、体調を崩せば、すぐにスタッフが駆けつけてくれる。高級な施設であるほど、サービスは至れりつくせりだ。しかし、それが幸せとは限らない。
「施設では“入居者の管理”が最も重要視されるので、自分のやりたいことが自由にできません。私が出会った95才のひとり暮らしの女性は、家族が心配して、これまでに5回施設に入居させましたが、5回とも1週間で退居しました。理由は、『お菓子を食べさせてもらえないから』。つまり、わがままなんです(笑い)。最近は目も見えなくなってきましたが、クイズが趣味のため認知症はなく、お菓子を食べることが唯一で最高の幸せだと話していました」
目の前の「好きなこと」に没頭する。これぞ、究極のひとり暮らしだ。
※女性セブン2021年3月4日号
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