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2021.02.23 00:42  産経ニュース

陛下、模索からご実践の1年 オンラインご活動「新たな可能性」

陛下、模索からご実践の1年 オンラインご活動「新たな可能性」

 「今、自分ができることはいったい何なんだろうか」。23日に61歳の誕生日を迎えた天皇陛下は記者会見で、新型コロナウイルス禍で国民と触れ合えない中での葛藤を明かされた。陛下はこの1年、オンラインでの地方視察など、新たな活動に取り組まれてきた。会見で、「状況に対応した務めを考え、行動していくことが大切」と、昨年に重ねて述べた陛下はお言葉通り、時代に合わせた天皇の在り方を模索し、実践に移されている。

(橋本昌宗)

 「大変でいらっしゃいましたね」。1月27日、昨年7月の豪雨で甚大な被害を受けた熊本県を、皇后さまとともにオンラインで視察した陛下は、同県人吉市で被災した塚本哲也さん(57)にこう声をかけられた。

 塚本さんは経営する酒店のコロナ禍での経営状況や、被災で受験生の娘が勉強する環境に苦労したことなどを話し、陛下は終始、塚本さん一家の健康や生活を気遣われた。塚本さんは「話を聞いていただき、つらい状況にあっても、これから襟を正して頑張って生きていこうという気持ちがわいた」と振り返る。

 陛下は皇后さまとともに昨年11月以降、日本赤十字社の各地の病院や、高齢者、障害者の活動を画面越しに視察し、関係者と懇談された。今年1月の熊本県に続き、2月以降、東日本大震災から10年を迎えるのに合わせて、福島、宮城、岩手の3県を視察される方向で調整が続けられている。

 陛下は会見で今年1月、新年に当たって公表したビデオメッセージも念頭に「オンラインによる活動に新たな可能性を見いだせたことは、大きな発見と言えます」と手応えをにじませられた。

 国民との触れ合い、特に被災者とのご懇談にオンラインを使うことについて、宮内庁内部では当初、慎重な意見が根強かった。しかし、感染症の収束は見えず、国民とのご交流が制限される事態が続いた。宮内庁によると、昨年の天皇誕生日からの1年間で、陛下が皇居以外を直接訪問されたのは国会の開会式や、創建100年を迎えた明治神宮など、東京都内の7回にとどまった。

 「静かに寄り添うだけでなく、陛下の国民への思いを示されてはどうか」との声もある中、陛下は宮内庁と相談し、オンラインの活用を決断された。前例にない活動の在り方だが、国民と直接触れ合い、話を聞くことを大切にしてきた陛下は会見で、「人々とのつながりを築き、国民の皆さんの力になるために、私たちに何ができるか」を考えた結果だったことに言及されている。陛下は歴代天皇が、自然災害や感染症が続く不安定な時代を鎮めたいとの思いを持っていたことを紹介し、「その精神は現代にも通じる」との思いも明かされた。

 こうした陛下のご姿勢は昨年8月15日、東京都千代田区の日本武道館で行われた全国戦没者追悼式でのお言葉からも垣間見える。

 平成の時代、上皇さまは戦没者への追悼と戦災からの復興、平和への祈りの3つを主な要素として、お言葉を述べられてきた。陛下も令和元年、初めて臨んだ追悼式で、この3要素を踏襲されている。

 一方、昨年のお言葉では、これまでの要素を削除したり縮小したりすることなく、コロナ禍に触れる新たな一文を加えられた。事前に周囲にも相談していたといい、慎重意見も踏まえながら挿入されたという。

 陛下に近い関係者は「突然新しいことをするのではなく、上皇さまがやってこられたことを継承しながらさまざまな意見も聞き、コロナ禍という難しい事態の中で、どう国民とともに歩むのか、考え、実践されているのではないか」と話している。

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