「マスコミが叩かれているのも嫌われているのもわかるし、右だ左だと世論が騒がしくなり分断が深まり、ジャーナリズムが成立しづらくなってきているという危機感もあります。我が社もネット上では『政治的に〇〇だ』と言われ叩かれています。たとえどんな思想であっても、報道に携わる人間なら、取材記者でも整理記者でもカメラマンでも、この世の中が少しでも良くなってほしい、自分も含めた全員が生きやすい世の中になってほしいと少しは思い、そのために仕事で貢献したいと願っているはずです」(大手紙女性記者)
女性記者は言い終わると「上級国民が何言ってんだって嫌われますかね」と下を向くが、人にニュースを伝えたい気持ちがある限り、この女性記者は報道の仕事を続けるだろう。
「ネットにこそ正しい情報がある」と言われ、マスコミの流す情報が信じられないと感じる人も増えた。一方で「ネットde真実」などと揶揄されるように、今なお「一次情報」のほとんどは大手既存メディアから発信されているという仕組みは変わっていないし、今後もしばらくは変わりそうにない。マスコミは信じられない、と思うのは仕方がない。しかし、報道に携わる職人として、日々、その技術を磨いている人たちの努力の成果をないがしろにはできないだろう。
そこで、あの地震が起きたときの動画に映るカメラマンについて、嬉しそうに説明してくれた在京テレビ局の現役カメラマンが言った言葉の先を続けよう。ネットで賞賛されたことは同業として嬉しいけれど、一言、言いたいことがあるらしい。
「(報道)カメラマンなら誰もが同じことを感じていたはずですが、まずカメラが手元にないというのがあり得ません。東日本大震災以降は、カメラマンの待機場所には必ずカメラを置いています。だから、揺れたらすぐにカメラを手にして構えて撮る。また、ヘルメットも被っていない。被災地域はもちろん、今は全国のテレビ局で毎年地震訓練をやっているのに、まだまだですね」
たとえ褒められても、もっとより良い方法があったのではないかと点検し、反省して次へ生かす。正確な情報を多くの人に伝えるための技術を磨く努力を重ねている人たちは、ネットで嫌われている世界にも数多くいて、そのおかげで私たちは一次情報からのニュースを得られるのだということは忘れないでおきたい。