前出の有馬氏は、この件は森氏から橋本氏への“大臣就任祝い”の意味があったと指摘する。
「この件は森氏が進めたものです。IOCがマラソン会場見直しを言ってきていたので、大臣就任の“ご祝儀”として橋本氏の地元の北海道にしてあげようということ。森さん流の義理人情の発想です。小池知事に打診すれば反対されるのが目に見えているので、出しぬく形でやったのでしょう」
橋本氏は当時、記者の囲み取材に「私に対してIOCからの説明は全くなかった」と釈明したが、その見え透いた言い訳がかえって小池氏の怒りに火を付けた。
「知らないはずがないわよ。だって、アレは森の娘でしょ」
そう言い放つのを側近や都庁幹部はハッキリ聞いた。「森の娘」とは、橋本氏が五輪相就任の挨拶まわりで組織委員会を訪問した際、「森会長は私を政界に導いてくれた、父みたいな存在」と語って森氏を喜ばせたことを指していることは言うまでもない。
小池氏はこの“屈辱”を忘れてはいなかった。
今回の組織委員会会長就任で小池氏が「政治的中立」を求めて自民党離党と自民党北海道連会長の辞任に追い込んだことで、橋本氏はマラソン誘致の実績を地元で選挙応援に利用できなくなった。
※週刊ポスト2021年3月12日号