コラム

【今週の読みたい本】このミステリーがすごい!大賞受賞作『元彼の遺言状』など4冊

『元彼の遺言状』新川帆立 宝島社 1400円

通勤時間中や、お昼休みなど自由な時間はスマホを見ている。そんなかたも多いと思いますが、たまにはその時間を読書タイムにあてませんか? そこで、今おすすめしたい本をご紹介。数々の有名作家を輩出してきた「このミステリーがすごい!」で大賞を受賞した小説から、疲れた心のお守りになってくれるイラストエッセイなど4冊をピックアップ。

【目次】

【単行本】『元彼の遺言状』新川帆立
【単行本】『わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い』レベッカ・ソルニット著 ハーン小路恭子訳
【単行本】『ほっといて欲しいけど、ひとりはいや。寂しくなくて疲れない、あなたと私の適当に近い距離』ダンシングスネイル著 生田美保訳
【単行本】『日本のいちばん長い日〈決定版〉』半藤一利

◆【単行本】『元彼の遺言状』新川帆立

◆トッピな設定+法律家ならではの着眼点。話題になりそうな派手な新人作家の登場

海堂尊や柚月裕子らを輩出した「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。

お金大好き弁護士の剣持麗子。製薬会社御曹司の元彼が“全財産は僕を殺した犯人に譲る、ただし犯人を特定できない場合は国庫へ”と指示した奇妙な遺言状に関わる。設定は作り物めくが、どこかアガサ・クリスティを彷彿させる作風でも。著者が東大卒の現役弁護士であることも含めて、ツカミは充分。

◆【単行本】『わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い』レベッカ・ソルニット著 ハーン小路恭子訳

◆ブレイディみかこさんも絶賛。ソルニットのフェミニズムは男性も解放する

密度の濃い文章に“知る・学ぶ・視界が晴れる”の三拍子を味わう。ソルニットはいわば#MeTooが生まれる素地を用意した歴史家&アクティヴィスト。

沈黙を強いられてきた女性や少数者の歴史と今を、キレのいいユーモアもまじえて活写する。翻って日本はどうか。昨年、選択的夫婦別姓制度案を“潰した”と自慢げにツイートした杉田水脈議員。潰す側の声が大きいのはなぜ?

◆【単行本】『ほっといて欲しいけど、ひとりはいや。寂しくなくて疲れない、あなたと私の適当に近い距離』ダンシングスネイル著 生田美保訳

◆“踊るカタツムリ”というペンネーム。ペースは遅くても、躍動する生でありたい

韓国発、人との心地よい距離を考えるイラストエッセイ。

内省の記録として書かれている点が共感を呼ぶ。ハッとしたのは次の一文。「関係は信じても、人は信じるな」。一見冷たく感じるが真意はこう。人の信念や価値観は時と共に移ろう。誰もそれを責められない。だから今の“関係”を全力で生きる。この考え方は友人、恋人、同僚などとの関係に悩む時の処方箋にもなりそう。

◆【単行本】『日本のいちばん長い日〈決定版〉』半藤一利

◆追悼 最初は匿名で出版。「歴史探偵」が誕生した記念碑的ノンフィクション

1月12日、また戦争を知る世代が身罷(みまか)った。その半藤さんは東京大空襲で九死に一生を得、疎開先で未来の妻(夏目漱石の孫)と出会い、文藝春秋で「太平洋戦争を勉強する会」を主宰。

玉音放送までの不穏な動きを群像サスペンスのように描いた本書を、30代の若さで物した(当初は大宅壮一編名義)。ここ10年ほどの世情は開戦前の空気と似ているとも。忘れたくない一言だ。

文/温水ゆかり

※女性セブン2021年2月11日号

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