コラム

親が認知症で預金凍結! 絶望する長男がやっておくべきだった手続きの数々

親が認知症になってからではもう遅い(イメージ)

 全国銀行協会(全銀協)は2月18日、預金口座を持つ人が認知症となった場合に、親族などが代理で引き出すことを条件付きで認める「考え方」を公表した。加盟する銀行に“柔軟な対応”を求める内容だが、裏を返せば認知症を患った人の預金について、家族らが困難な対応を迫られる状況があるということだ。

【表】親子で早めに話し合っておきたい「認知症に備える手続き」一覧

 全銀協の示したのはあくまで大きな方針であり、具体的な対応は各金融機関に委ねられる。だからこそ、認知症になる前に家族で済ませておきたい手続きが複数ある。『週刊ポストGOLD 認知症と向き合う』より、その実例を紹介する。

 都内在住の50代男性Aさんは、85歳の父親が認知症と診断され、介護費用に充てるために父親の口座から現金を引き出そうとした。銀行窓口で事情を説明し、「どのような手続きをすればいいか」と尋ねたところ、「預金はおろせない」と門前払いにされたという

「ひとりっ子なので父の面倒は私が見るしかないが、子供がまだ大学生でうちの家計も余裕がない。父の口座のお金が動かせないとなると、先行きは不安しかありません。銀行の窓口の人の話では、引き出しには『本人の意思確認』が必要で、認知症となると意思が確認できないから、家族でもおろせないという一点張りで……。そりゃ銀行のほうもお金が本人のために使われなかった場合の訴訟リスクとか、いろいろあるのでしょうが、どうにも納得できません」(Aさん)

 そうした状況に備えて成年後見制度の利用が推奨されているが、費用負担などもあり、普及していないのが現状だ。

 Aさんのような窮状に陥らないために、預貯金や不動産の管理、そして相続、生活、医療などについて親が認知症になる前に手を打っておきたい手続きはたくさんある。

「親の介護にかかるお金は親のお金を使うのが原則です。まずは『代理人カード』で銀行口座の凍結に備えるのが基本です」

介護アドバイザーの横井孝治氏はそう指摘する。銀行口座が凍結されても、親の預貯金を管理できるのが「代理人カード」だが、親とはいえ「銀行口座を共有してくれ」と突然、頭を下げてもうまくいくものではない。

「親を説得するには、まずはこちらの胸襟を開くことが大切です。子の代理人カードを親の名前で先に作り、『私に何かあったら、これでお金を下ろして医療費に使って』と親に渡す。その上で『ということで、お父さんの分も作ってお互いに持ち合いましょう』と促す。つまり、『こちらの腹の中を開示するからお互いに』というスタンスの説得なら、うまくいきやすい」(横井氏)

◆認知症になる前に「エンディングノート」を

 親子で風通しをよくしておけば、認知症が進んだらどのように介護や相続を進めるかといった「終活」についても話し合いがスムーズになる。

認知症が進んでからだと、相続についても本人の意思が曖昧になり家族は苦労する。高齢者の生活サポートを手掛ける「あんしんライフ」の角田考史氏が解説する。

「終活を考えるにあたって、いきなり遺言書となると身構える人も多い。人生のしまい方についてもっとカジュアルに整理するため『エンディングノート』を利用する手があります。書式に決まりはないので、自由に書いていいし、いつでも何度でも書き直せる」

 認知症になる前にエンディングノートに記入しておきたい事項は、「氏名」「生年月日」「本籍地」「血液型」などの基本情報や、預貯金の種類と口座番号、所有する不動産の住所など。

「さらに、終末期に受けたい医療などについてその時点での思いをメモ程度に書いておきましょう。不要な終末期医療を受けずに済みます」(角田氏)

 その際、介護の方針も決めておく。「在宅にするか施設に入居するか」といった希望も伝えられるのだ。また、特に財産をある程度所有している場合、認知症になったあとに家族が財産の中身を把握できないといったトラブルが起こりやすい。その場合は「財産目録」を作成しておきたい。

「遺産の種類や価格などについてまとめます。法律上作成する義務はありませんが、相続税の申告などの際に役立ちます」(前出・角田氏)

 財産目録には不動産や預貯金、有価証券などの種類や価格、さらには負の財産を書き出し、不明なものについては空欄にしておいてもいい。これがあれば遺言書作成の負担も軽減できる。認知症とお金の問題は切っても切れない関係だ。資産を守るだけでなく、本人の意思を尊重するためにも、早めの対応が重要となる。

※週刊ポスト2021年4月1日号増刊『週刊ポストGOLD 認知症と向き合う』より

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