国内

女性を排除してきた酒造り 数少ない女性杜氏が進める「働き方改革」

杜氏として修業を積んだ長谷川さんはいま、社長として辣腕を振るっている(撮影/杉原照夫)

杜氏として修業を積んだ長谷川さんはいま、社長として辣腕を振るっている(撮影/杉原照夫)

 就業者が多い建設業でも、女性の職人の割合はわずか4.5%。「小学生女子のなりたい職業」常連のパティシエさえ圧倒的に男性が多い。まだまだ日本には「男性ばかりの世界」が多いのが現実だが、そんな世界の門戸をたたく女性たちがいる。彼女たちは、なぜそこで立ち続けることができるのか。

 日本は昔から女性職人が少なかったわけではない。中世まで、女性たちは幅広い専門職についていたと指摘するのは、ジェンダー史に詳しい国立歴史民俗博物館教授の横山百合子さんだ。

「ところが江戸時代に入ると状況が一変します。職人が助け合うため、あるいは利益を独占するために職人の仲間を作り、幕府もこれを保護するようになります。仲間の構成員は基本的に家の当主である男性に限られました。それにより、夫婦で営業している職業でも職人は夫で妻は手伝いという流れができた。近世以後女性が一人前の職業を持つことが認められないしくみが広がったのです」(横山さん)

 なかには女性を物理的にも排除する職業があった。その代表が酒造りだ。

「古代から行われている仕事ですが、江戸時代の社会のしくみから酒蔵に女性を立ち入らせないようになります。そして、女性には月経や出産による血の穢れがあるとか、髪につける鬢付油のにおいがお酒を悪くするなどの説が後付けで生まれたのです」(横山さん)

 そんな“迷信”に構わず、堂々と足を踏み入れた女性がいる。京都府亀岡市にある酒造会社「丹山酒造」5代目当主の長谷川渚さん(42才)だ。

「昔は女性がお酒を造っていたと聞いたことがあります」(長谷川さん・以下同)

 明治15年創業の老舗酒造の次女として生まれた長谷川さんは、幼い頃から3才上の姉とともに家業を継ぐことを決めていた。

「酒造りに興味があったので、早い段階で姉と家業を継ぎたいと思っていました。本格的に進路を決める際、私は人と話すのが苦手だったので姉が営業を担当し、自分は職人になると決めました」

 高校卒業後、滋賀県の研究所で酒蔵のしくみなどを学んで実家に戻り、杜氏の見習いとして仕事を始めた。

「昔から職人さんが10人くらい出稼ぎに来て半年ほど蔵で寝泊まりしながらお酒を造るのが定石でした。見習いを始めた頃は杜氏の皆さんは男性で、女性は私だけ。両親は私に隠れて『甘やかさないでください』とお願いしていたそうですが、皆さんとても親切で『女は入ったらアカン』ということは一切なかった。とはいえ、実際にやってみると楽ではなかったです」

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン