自分のことは後回しのトスト代表、“神対応”のガスリー
──お話を伺って、角田選手はいいチームに入ったんだな、と感じます。
本村:私もそう思います(笑)。チーム代表のフランツ(・トスト)は元ドライバーなのでドライバーのことをよくわかっていますし、オーストリア人ですが日本で働いていたこともあるので、日本人のこともよくわかっています。メンバーは500人以上もいるのに私のことまでよく見てくれていて、仕事人としても、人間としても尊敬しているし、大好きです。それからドライバーのピエール(ガスリー)も素晴らしいんですよ。
──ピエール・ガスリー選手は昨年、イタリアGPで初優勝を果たしましたね。
本村:あのレースは本当に興奮しました。イタリア人って緊急時ほど燃えるようです。イレギュラーにこそ強いというか(笑)。
──表彰台で、久しぶりにイタリア国歌を聞きました。イタリア人が国歌を全力で歌うところ、とても好きです。
本村:サッカーでもそうですよね。でも歓声に包まれたあの表彰式のときも、フランツは端のほうで静かに手をたたいていたんです。ここぞというときはきっちりチームを引き締めながら、普段は自分のことは後回しで、決して偉ぶらないんです。
──角田選手のチームメイトとなるピエール・ガスリー選手はどんな人ですか?
本村:取材した人がみんなピエールの大ファンになってしまうくらい、人を惹き付ける、何ともいえない魅力を持った選手です。いろいろなスポーツ選手を見てきましたが、癖のある人も多いなかで、ピエールのように性格のいい人は稀だと思いますね。取材にも協力的で、ファンに“神対応”をしているところをよく見ます。角田選手には、ピエールのプロフェッショナルなところをどんどん盗んでほしいと思います。
──角田選手とはもうお会いになりましたか? 本村さんから見た角田選手の印象は?
本村:会ってますよ。すでにチームの人とフランクに話していて、馴染んでいるようです。角田君も私と同じで、海外が合ってるんじゃないかな。角田君からは、やりたいことをやって輝いている人独特のオーラや、一つのことに邁進してきたピュアさを感じます。そして、速くなりたい、強くなりたいという、シンプルな勢いも。F1ドライバーって選ばれし人ですから、やっぱりオーラは違います。
ただこれは、ファクトリーで働いている人にも言えることなんです。みんな、好きなことをやっているからキラキラしている。世の中には、お金のために仕事をしている人もいると思いますが、F1ってそうではない。自分のやりたいことを極めようという高いモチベーションを維持しないとやっていけない世界だと思います。