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「女性だから不利ということはあまりない」と語る福吉奈津子さん(写真/原田左官提供)

「やっぱり平等は難しいですよね。体力の差などで女性を優遇すれば、男性にとって不公平になると言われることがあります。ですが、『男が重い材料を2つ持っているのだから女性も2つ持つべき』というのが平等だとは思えない。だからまずは、男女がお互いの違いを知ることが大事だと思います」(原田さん)

 男女平等は難しい──原田左官はその事実から目を背けず、試行錯誤を続けている。

「女性左官が働くようになってから女性左官のための女性更衣室をつくりました。すると、『男にもほしい』という声が上がり、男性用の更衣室や休憩室をつくりました。考えてみれば男性だって清潔な部屋で人目を気にせず着替えたい人も多いし、疲れたら室内の静かなスペースで休みたい。

 その結果、3Kといわれた職場環境が改善され、左官同士のコミュニケーションが増えて社内の人間関係の風通しがよくなり、『この職場なら仕事をしたい』という若い男性の左官が増えました。また、3年前から女性専用の相談窓口も創設。女性職人が気軽に意見を言えるような雰囲気作りを心がけた結果、女性はもちろん男性にとってもより働きやすい職場になったと喜ばれています」(原田さん)

 いま、原田左官が新たに直面しているのは「女性職人として現場の仕事をどれだけ長く続けられるか」ということ。

「できるだけ長く左官として働きたいですが、一回り上の先輩も『膝が痛くなってきた』と話しているし、体力的な衰えは心配です」(福吉さん)

 実際、握力や持久力などの年齢に伴う衰えは、女性の方が早いというデータもある。ノンフィクションライターの杉浦由美子さんも「職人は、どうしても体力面で男性が有利になる」と指摘する。

「機械化されてない仕事の多い職人の世界は、女性が不利になることが多く、目指していた職業であっても諦めてしまうケースが散見される。

 実際、小学生女子の『将来の夢』トップ5に入るパティシエですが製菓学校の男女比は7対3で男性が多い。生ケーキ作りは早朝の下ごしらえから始まり、賞味期限も1日なので作り置きができず、常に仕事に追われる。これはパティシエに限ったことではなく職人と呼ばれる仕事であれば、ある程度共通する事実だと思います」

 出産という女性特有のライフイベントも仕事を続けるためのハードルとなる。

「私は石屋になるために子供を持つことを諦めました」

 そう打ち明けるのは、日本初の女性石職人の上野梓さん(39才)だ。上野さんには10年間連れ添う夫にあたるパートナーがいる。

「とても悩みましたが、持っている時間をすべて使って、全身全霊で石屋に取り組みたいという思いが強く、産むなら自分で子供に全力で向き合いたいという理想もあった。どちらも全力でというのは難しく、私の性分ではジレンマを抱えることになると考えました」

 上野さんのように子供を諦める女性がいる一方、左官職人の福吉さんは一男一女を育てながら働いている。

 環境や職の質に差があるのはもちろんだが、体力面だけでなく、出産、更年期といった体調の変化が激しいため、女性職人が長く働いてキャリアを形成するのは容易でない。実際、今回編集部が取材を申し込んだ女性職人のうち何人かは、すでに退職していた人も少なくなかった。これもまた女性職人をめぐる真実だ。

※女性セブン2021年3月18日号

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