国内

首相盟友「疑惑の文化功労者」原点は菅氏意向の文化庁長官人事だった

菅義偉・首相のスキャンダルの源泉をノンフィクション作家で森功氏がレポート(時事通信フォト)

菅義偉・首相のスキャンダルの源泉をノンフィクション作家・森功氏がレポート(時事通信フォト)

 菅義偉・首相の権力の源泉は「人事支配」にあると言われる。「政策に反対する官僚は異動してもらう」と公言する一方、山田真貴子・前内閣広報官、和泉洋人・首相補佐官ら、お気に入り官僚を抜擢し、彼らをめぐって接待問題や不倫疑惑といったスキャンダルが噴出。ついには山田広報官の辞任に至った。

 菅首相の強権人事──その原点は官房長官時代の5年前にある。彼の意向によって誕生した文化庁長官が、首相盟友の「疑惑の文化功労者」選出をもたらした。すべての発端は、首相自身だったのだ。ノンフィクション作家で『菅義偉の正体』著者の森功氏がレポートする(文中敬称略)。

 * * *

「どうしても取らせたい」

 芸術と学術の著しい実績を称えて選ばれる文化功労者は、数年後には文化勲章にエントリーされる。どちらも11月初旬には、天皇が宮中で催す茶会に招かれる。わけても文化勲章に輝いた者は天皇、皇后と同じ円卓に着き、フランス料理のコースに舌鼓を打ちながら歓談する。元文部科学事務次官の前川喜平は、2016年11月4日の茶会に参加した経験があるという。

「あのときはたまたま馳浩文部科学大臣がお茶会に出席できず、次官だった私が代役として文化勲章受章者の皆さんと丸テーブルで食事をしました。天皇(現在の上皇)の隣に座ることになり、私の隣が作曲家の船村徹さん(故人)でした。向かい側の美智子皇后(現在の上皇后)のお近くには、脚本家の平岩弓枝さん。皇后と平岩さんはずっと楽しそうに談笑していましたけど、こちら側は困りました」

 さらに茶会の模様を次のように語った。

「天皇と船村さんが私を挟んで会話していたのですが、それがなかなか通じない。栃木県の出身の船村さんはしきりに那須の話をしておられました。しかし、お歳のせいで耳が遠く、天皇のお言葉を聞き取れない。だから私がお2人のあいだで通訳をすることになりました」

 この船村を文化勲章に押し込んだのが、官房長官時代の菅義偉だった、と前川がこう続けた。

「菅さんが直接船村さんと親しいイメージではありませんでしたが、どうしても取らせたいと言う。今年あげないとお亡くなりになるかもしれない、と(官邸を通じて)言われましてね。それで、やむなく関係部署に推しました。文化功労者や文化勲章にもやはり政治の力は働くものですが、船村さんはすでに文化功労者だったし資格があった。しかし、ぐるなびの滝さんのそれは、同じ政治介入でも次元が違うのではないでしょうか」

 グルメサイト「ぐるなび」会長で、長年にわたる菅のスポンサーとして知られる滝久雄は、2018年、母校の東京工業大学や東京藝術大学に多額の寄付をしたおかげで紺綬褒章を受けた。そのうえで昨年、文化功労者に選出された。

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
3大会連続の五輪出場
【闘病を乗り越えてパリ五輪出場決定】池江璃花子、強くなるために決断した“母の支え”との別れ
女性セブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン