「前進座は給与制なので、厚生年金を受け取れるんです。61才になった翌月からもらえる予定でしたから、誕生日を迎えたばかりだったのに、結局、1銭ももらえず仕舞いでしたね。これを使って娘との旅行など、いろいろ考えていたでしょうに……」
「これから、役者人生の晩年に向かう」という山崎さんは、劇団に入って47年。舞台数はもうすぐ1万回になる。
「90才近くになっても現役を続けている先輩がたくさんいますから、女房に『まだ頑張ってるよ』と言えるように、頑張ります。できることなら還暦を過ぎた文美の新しい芝居を見たかった。前進座では女優と女形が一緒の舞台に立つことがありますから、二人で立てたらよかったんですけどね」
【プロフィール】
山崎辰三郎/1948年生まれ。出身地・徳島で、サラリーマンを経験した後に23才で上京。舞台芸術学院講習科、前進座附属養成所(3期)を経て、前進座に所属。1974年『水沢の一夜』で舞台デビュー。女形を得意とするが、幅広い役をこなしている。
※女性セブン2021年4月1日号