「たしかに寮生活でとにかく練習時間は長かったし、監督はできるようになるまで終わらせてくれないから大変ではありました。昼に始まった練習が深夜1時、2時まで、なんてこともありました。
ですが、体調が悪いときにそれを言い出せない雰囲気はまったくありませんでした。当時は運動中に水を飲むのはタブーといわれる時代で、中・高校の部活では鉄拳制裁も当たり前だったけれど、監督に水を禁止されたり殴られたりしたことは一度もなかったです。生理だから休むな、と言われたこともありません。
とはいえ、監督は日本一のバレー指導者ではあっても、女性の不調については専門外。そういったことについては、女性マネジャーがいたので、いつでも相談することができました。
一度練習中に肋骨にヒビが入ったことがありました。痛みもあり、練習についていけるかと悩みましたが、監督や医師が『休んでも休まなくても治りは一緒』と言ったことがきっかけで、そのまま練習することにしました。
このときも、監督や先輩から『休め』とも『続けろ』とも言われなかった。もちろん、当時は五輪を目前に自分自身が練習を休むという考えがなかったともいえますが、自分がそうしたいから、けがでも続けることに決めたというだけのこと。
生理もこれと同じだと思います。不調があればかかりつけ医がいて、先輩やマネジャーなどまわりのサポートも万全で、誰にも言えずにひとりで悩みを抱え込むということは絶対なかった」(田村さん)
若き日の田村さんのようにバレーにすべての情熱を注ぎ込むことに幸せを感じる人もいれば、体に負担をかけずに子供とゆっくり過ごすことに充実感を覚える人もいる。はたまた、生理周期をできる限りコントロールして仕事に邁進することを喜びと感じる女性もいるだろう。
自分の体や心と向き合い、どうするのが快適でいちばん納得できるのかを考える──その答えが出たとき、フェムテックは強い味方になってくれる。
※女性セブン2021年4月1日号