それを防ぐには、ワクチンの「集中配布」を検討すべきだ。緊急事態宣言が最後まで解除できなかった1都3県は、すでに第4波の入り口にある。ここで食い止めるには、まずこの地域で一気にワクチン接種を進めることが効果的だ。3月21日に「Mr.サンデー」(日本テレビ系)に出演した愛知医科大学感染症科の三鴨廣繁・教授は、「不公平感につながる暴論かもしれないが」と前置きしたうえで、「人口密度が高かったり、感染者数の多い地域を中心にワクチンを接種していくべきだ」と提言した。必要な措置を必要なタイミングで必要な人に施すことは、暴論ではなく正論だろう。
しかし、それができない事情は政治にある。自民党ベテラン議員がワクチン配布の内情を告白する。
「ワクチンは各都道府県、各自治体に公平に配ることになる。5月にも総選挙があるかもしれないと言われているのに、それまでに選挙区にワクチンが届いていなければ、“代議士は何やってたんだ”と地元で突き上げを食って与党に不利になる。だから政府は、まず東京、神奈川、大阪だけ4箱、それ以外の道府県は2箱ずつ配ると決めた。その後も3都府県だけ多めにするが、それ以外は平等に配る。4月中に全市町村に配ると強調しているのも、選挙区ごとにワクチンがあるところ、ないところができないためだ。都市部からは人口に比例して配るべきだという声も上がっているが、そんなことをすれば鳥取県は東京の25分の1しかワクチンがこない。当面、何箱、何十箱という配布しかないのだから、東京に10箱あるのにウチの県はゼロだ、なんてことになったら選挙にならない」
5月総選挙に備えて4月中に全選挙区に配布を終えるという目論見なのだ。そこには国民の命や生活を守ろうという意識も、国を背負う責任感もない。こんな悪平等ワクチン配布こそが暴論ではないのか。