「銀歯の原材料であるパラジウムなどの金属に体が反応してアレルギーを起こし、さまざまな不調が出てくることがすでに30年ほど前、旧厚生省の調査で判明しました。女性の場合、体調が思わしくないときは更年期障害でなく、銀歯による金属アレルギーの可能性もあります」(岩澤さん・以下同)
頭痛や肩こりなど「更年期に伴う不調」だと思っていた諸症状が、10年以上前に埋め込んだ銀歯を除去したことで治まったというケースもあり軽視はできない。また、こうした不調は免疫力の低下にもつながる。
デメリットがある銀歯に代わって台頭しているのが「コンポジット・レジン修復」という治療法だ。
「プラスチック系素材のレジンは、歯の色に近い乳白色のペースト。虫歯部分だけを削ってから接着剤を塗りレジンを充填、ライトで紫外線を当て硬化させます。小さな隙間にも入り込んでピッタリと接着されるこの治療法は、歯を削る量が最小限で済むのがメリット。1980年代にレジン治療はすでにありましたが当時は『欠ける』『割れやすい』と敬遠されました。その後、レジンの素材が改良されて、銀歯と同等の耐久性が科学的に証明されています」
レジンで治療した歯は天然の歯とほとんど見分けがつかず、銀歯のような金属アレルギーのリスクもない。患者にとってメリットが大きい治療にもかかわらず、普及が遅れたのには理由がある。
「レジン修復は手間と時間がかかるのに保険点数が低く、歯科医院の利益が少ない。一方、銀歯治療はレジン修復より保険点数が高く、歯型を取った後の作業を歯科技工士に任せられるため、効率的です。つまり、レジン修復より銀歯の方が歯科医にとって負担が少ないうえ、儲かる治療だったのです」
現在は銀歯の材料となるパラジウムなどの金属価格が高騰するなど、一概にはいえなくなっているものの、患者にとってデメリットの多い治療に押しやられていたことは否定できない。
※女性セブン2021年4月8日号