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2021.04.04 22:42  産経ニュース

【チェックEYE】野口智博氏 池江、失っていなかった「勝負勘」

【チェックEYE】野口智博氏 池江、失っていなかった「勝負勘」

 残り10メートル。女子100メートルバタフライの池江の腕は、上がっていなかった。体が前に出ず、きつかっただろうと想像する。そんな限界の状況でも、彼女自身が頭で記憶している「勝負勘」が働き、今持っている力以上のものを形にする天性の能力を発揮したと思う。

 両腕で水を掻き出すバタフライは、4泳法の中で最も体力の消耗が激しい。そんな中、池江は予選と準決勝を泳ぎながら、瞬時にターン動作に対する改善点を見つけ、本番の決勝で見事に修正、準決勝から記録を0秒71も上げた。現状で決勝まで3本を泳ぎ切れるかどうかという私の心配は、無用だった。

 持ち味である、肩甲骨の柔軟性を生かして水の抵抗を減らす技術も戻ってきている。白血病の治療・療養からの復帰後初めて同種目に出場した2月の時点ではまだ、ストローク数が多く、以前のような推進力につながっていなかった。この短期間で泳ぎは見違え、改めてその能力の高さに舌を巻く。

 よくここに戻ってきた。そしてこの種目で東京五輪を決めるとは。五輪まで3カ月ある。さらにどこまで伸びるか、再び世界のトップに戻ってくることを期待をさせる泳ぎだった。

(日本水泳連盟科学委員、400メートル自由形元日本記録保持者、日大文理学部教授)

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