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闘病15キロ減乗り越え 池江、涙の東京五輪切符

闘病15キロ減乗り越え 池江、涙の東京五輪切符

 入院生活を経て、白血病から復帰初戦(東京都特別大会)となった昨年夏。ひと際目立つ、白く、きゃしゃな体を見て、誰がこの“未来”を予想しただろう。

 4日、予想もしなかった順位、タイムを確認するとガッツポーズ。「自分が勝てるのはずっと先のことだと思っていた。本当にうれしい…」と声を震わせた。

 レース前、名前を呼ばれ会場入りする際、「ただいま」とつぶやいた。白血病判明から、つらい闘病生活を経てこの舞台に戻ってきた。「何番でも、ここにいることを幸せに感じよう」と、泳げることの真の喜びをかみしめた。予選から決勝までタイムを上げ続け、本職でもある100メートルバタフライで「日本一」を奪還。レース後、目に涙をいっぱい浮かべ、しばらくプールから上がれなかった。

 闘病中の2019年夏。池江がアンバサダー契約を結ぶスポーツ用品メーカー・ミズノの藤田真之介さん(45)は悩んだ。「池江選手を広告に使い続けることで、重荷になっているんじゃないか」。病室で池江は力強く言った。「私は絶対にプールに戻る。(広告から)私を消さないで」

 抗がん剤治療の副作用で嘔吐(おうと)を繰り返す日もあった。それでも、孤独の病室に自転車型のマシンを持ち込み、体力作りに励んだ。床に伏せても、アスリートの心を一時も失わなかった。

 かつて日本記録を連発した池江にとり、復帰後はもどかしい日々が続いた。「前なら踏ん張れたところも体がついていかない」。それでも練習量を増やし、1日3食のほか補食も積極的に取った。闘病で15キロ以上も痩せた体重を増やし、世界と戦うための力を蓄えた。

 はやる周囲の期待には、「目標は2024年パリ五輪でのメダル獲得」と冷静さを貫いた。東京五輪はその途上でしかなかったが、自分の限界に挑み続けた成果が結実した。「実感はわいてないけど、五輪に向け、本番でタイムを上げられるような練習を積んでいければ」。周囲には想像もできないほどの強い意志で“東京”、そしてパリへと突き進む。(川峯千尋)

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