2017年に照ノ富士が膝を手術したのち、上記のとおり七月場所、九月場所と連続して途中休場を余儀なくされた直後の10月、その事件は起きた。ご記憶の読者も多いだろうが、白鵬、日馬富士、鶴竜の3横綱と後輩モンゴル力士らの食事会の席で、日馬富士が前頭だった貴ノ岩に暴行し、責任を取って廃業するという不祥事だ。事件のきっかけを作ったのは白鵬だった。酒を飲んで貴ノ岩に説教し、その際に貴ノ岩がスマホをいじったことに激高した日馬富士が、素手やカラオケのリモコンで貴ノ岩を殴打した。
事件は「日馬富士が貴ノ岩を殴った」という部分ばかりが強調されているが、その場にいた照ノ富士も、白鵬や日馬富士から厳しく指弾されていた。 本誌記事で詳報しているが、事件現場で「横綱たちとは壁がある」と口にした照ノ富士が受けた仕打ちや、4年に及ぶ塗炭の苦しみにつながった仕打ちを照ノ富士が忘れたはずはない。
「照ノ富士は下半身強化をして4年前よりパワーアップしている。192センチ、177キロの照ノ富士は192センチ、158キロの白鵬と20キロ近い差がある。ともに右四つを得意とする相四つだ。白鵬はカチ上げや張り差しを狙うだろうが、照ノ富士もひるむことなく、がっぷり四つとなるだろう。これまでの対戦では、同じ部屋にいた日馬富士の弟弟子であり、モンゴル出身の後輩という立場で白鵬と対峙していた。それが事件を経て、ついに初めて白鵬に遠慮なく全力でぶつかることになるのではないか。これまでの対戦成績は関係ないでしょう」(協会関係者)
暴行事件の背景には、貴ノ岩が「これからは俺たちの時代だ」と豪語していたと白鵬が聞きつけて腹を立てた経緯があった。照ノ富士は、七月場所で白鵬に勝って引導を渡し、「俺たちの時代」をたぐり寄せることができるか。