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2021.04.08 16:00  マネーポストWEB

酔った夫のモラハラ 肉体的暴力がないと離婚は難しい?弁護士が解説

週末になると昼からグチグチと…(イラスト/大野文彰)

 ストレス発散の手段としてアルコールの力を借りる人も少なくない。しかし、ついつい杯を重ねて悪酔いし、家族に迷惑をかけるというケースもある。酔ったすえに暴言を吐いてくる夫に悩み、離婚を考えているという女性の相談に、弁護士の竹下正己氏が回答する形で解説する。

【相談】
 夫は週末になると昼間からお酒を飲みますが、特にコロナ禍になってから酒量が増えました。ふだんはおとなしい性格なのに、酔っ払うと「お前はガサツだから、掃除してもやり残しているところが多い」「おれは仕事が大変だから、お前は仕事があっても17時までに家に帰って、家事をやらないとダメだ」などと、たまっている日頃の不満などをぶつけてきます。

 文句を言われてもどうしようもないことばかりなので、毎週末この調子が続くのであれば、離婚したいと思います。暴力を振るうことはありませんが、飲酒時の言動を理由に離婚することはできますか。

【回答】
 態度・言葉・文書など、敵意ある方法で相手に接し、そうした言動等の結果、相手が尊厳を傷つけられ、自信を失い、他人との交流も難しくなり、肉体的または精神的健康に影響を生じさせることをモラルハラスメント(モラハラ)といいます。

 職場でのモラハラは仕事や職場に悪影響を及ぼすことから、厚労省でもハラスメントの一種として注意を促していますが、そうしたことは家庭でも珍しくありません。

 理不尽な説教を長々とされたり、人格を傷つける侮辱的発言を受ければ不愉快ですし、度が過ぎれば怒るのが普通です。これが夫婦間で繰り返されれば愛情が薄れます。精神状態に影響して体調を崩し、治療を要するほどになれば、婚姻生活の維持自体を苦痛に感じるようになるでしょう。

 しかし、モラハラを理由とする離婚は簡単ではありません。離婚するには、「相手方配偶者の不貞行為」「悪意の遺棄」「3年以上の生死不明」「回復の見込みのない強度の精神病」に該当する場合でなければ、婚姻を継続し難い重大な事由があることが必要です。しかも、原則として、離婚を求める側がその原因を作っていないことが求められます。

 ご主人のモラハラがあなたの引き起こしたものではなく、かつモラハラ言動の結果、婚姻関係が破綻してしまい、元に戻らない状態になっていることが離婚の条件となります。肉体的な暴力・浮気・浪費など、ほかの事情がまったくないのに、言動だけのモラハラで離婚を認めたケースはあまりありません。

 ご主人の場合、酒癖が悪いようですが、酔って暴力を振るうのでなく、酔っ払って説教するのであれば、ご主人が謝り、「酒を断って二度と説教しない」と誓った場合は、よほどひどいモラハラでない限り、裁判所は婚姻関係が破綻したとは認めないように思います。

 暴力でけがをすれば写真や診断書で証拠を残せますが、モラハラの証拠を残すには工夫が必要です。一度だけでなく何度も説教や暴言の一部始終を録音し、これでは元に戻れないと裁判所に理解させる必要があります。

 コロナ自粛で酒量が増えたのであれば、一概にご主人だけを責められません。ふだんはおとなしいのであれば、酔っていないときに話し合って、モラハラをやめるよう強く諫めてはいかがでしょうか。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※女性セブン2021年4月15日号

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