体重は15kg減、筋力はほぼ失われた
池江選手の入院生活は約10か月に及び、退院することができたのは2019年12月のこと。退院後も、復活への壮絶な努力が続いた。
「地元の友達と女子会を楽しめるまでに回復していたのですが、手足は細くなり、以前とは別人なほどやせてしまった。食事中、何度もトイレに立っていましたし……。本人は“食べられないものがいっぱいあって、筋肉がちょっと落ちちゃったの”と話していたけど、闘病生活の大変さが伝わってきました」(池江選手の知人)
長期療養によって体重は入院前より15kgも落ち、筋力はほぼ失われた。闘病前は当たり前にできていた懸垂も、軽くなった体ですら、その細い腕では1回も持ち上げることができなくなっていた。
それでも「できる」という言葉を胸に、諦めることはしなかった。退院直後から自宅にトレーニング器具を設置し、軽い負荷をかけたトレーニングを開始。気が遠くなるような毎日だったが、もう一度プールにもどることを目標にトレーニングを重ねたという。そして昨年3月17日、406日ぶりにプールに入ったことを、SNSで笑顔で報告した。
「最初は水に顔をつけることも許されない状態からのスタートでした。地上でのトレーニング同様に、少しずつ練習量を増やしていきました。ただ、少し泳いだだけで苦しく、試合に出ることなんて想像もできなかった」(前出・スポーツジャーナリスト)
待ち望んだプールでの練習再開だったはず。それなのに、弾んだ気持ちは、練習が本格化するにつれて徐々に沈んでいってしまう。