新疆産の綿を使っているかどうかについて「ノーコメント」と発言したファーストリテイリングの柳井正会長(時事通信フォト)

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 中国批判の立場を鮮明にしたH&Mに対しては中国国民から大きな反発が起きており、SNS上で不買運動を呼びかける声も出ている。中国のH&Mの1号店である上海の店舗では「閑古鳥が鳴いている」と上海在住の日本人女性が語る。

「現在も店は開いているのですが、ガラガラで客足もまばら。インターネットの地図アプリでH&Mの店舗を検索しても一切表示されない状態が続いています」

 日本企業も中国での不買運動にたびたび苦しめられてきた過去がある。

 2005年に小泉純一郎首相(当時)が靖国参拝を行なうと、中国各地で反日デモが勃発。日本料理店が破壊されるなどの被害を受けた。

 2012年には尖閣問題で「抵制日貨(日本製品ボイコット)」がスローガンに掲げられ、あらゆる日本製品の売り上げがダウン。特に自動車業界はピーク時の3分の1までシェアを落とした。日系の百貨店や大型スーパーは放火され、暴徒たちは商品を略奪した。

 中国で飲食ビジネスを手がけ、ジェトロ上海アドバイザーを務めるゼロイチフードラボ総経理の藤岡久士氏が語る。

「2005年の時は、身の危険を感じて急遽ベニヤ板で店舗を覆い隠したのですが、それでも日系店舗だとバレて石を投げられました。幸い、公安にパイプがあったので店舗を暴徒から守ってくれましたが、危なかったですね。ほかの店は公安が暴徒たちを黙認していたので、放火されている店もありました。2012年は、売り上げが3割ぐらい減少した」

 理不尽なことが起こるのは店舗だけではない。

「駐在員も例外ではありません。習近平政権は2014年の反スパイ法を皮切りに、国家安全法、サイバーセキュリティ法を相次いで施行し、治安維持を名目に中国と緊張関係にある国の駐在員をスパイ容疑などで逮捕、圧力をかける『人質外交』を繰り返しています。2019年にも伊藤忠商事の駐在員がスパイ容疑で1年以上も拘束されていることが分かり、改めて気を引き締めました」(藤岡氏)

 中国ではスパイ罪の最高刑は死刑。刑事裁判の進め方も日本や欧米と大きく異なるため、無罪の立証は極めて困難とされる。その他にも現地企業への認証取り消し、関税の引き上げなど、“100倍返し”の報復を恐れているのだ。

※週刊ポスト2021年4月30日号

ユニクロは中華圏の売り上げがすでに日本国内を上回っているという(時事通信フォト)

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