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どうしても飲みたい人々 路上だけでなく電車、喫煙所、オフィスにも増殖

密にならず非難されない場所を求めて飲酒難民はさまよう(イメージ)

密にならず非難されない場所を求めて飲酒難民はさまよう(イメージ)

 適度な飲酒は心身をリラックスさせ、気分の切り替えに役に立つ。一日の締めくくりや、一週間の終わりに楽しくお酒を飲むことで、また頑張ろうと気分を新たにするサイクルで生活していた人も多いだろう。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大によって飲食店の営業時間短縮が続いたことで出現した「飲酒難民」、路上飲みを始めるなどして東京都から注意喚起されるばかりか、生活サイクルまで乱れてしまう例が相次いでいるらしい。ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルスの感染再拡大により、東京都や大阪府などに「蔓延防止措置」が適用され、また飲食店へ午後8時までの時短営業協力要請が出された。二度目の緊急事態宣言が解除されたことで居酒屋などには一時的に客足が戻っていたが、「これでまた振り出しだ」という飲食店経営者のため息も聞こえてくる。

 そんな中、浮き彫りになっているのは「飲酒難民」と呼べるような、どうしても「飲みたい人々」の存在だ。

「居酒屋が集まる繁華街の公園や駅前、コンビニ前と、ありとあらゆるところで缶ビールや缶チューハイを飲む人が増え、報じました。それが悪いことかどうか、正直わかりません」

 自身も飲酒が大好きだという民放情報番組ディレクター・佐藤晃一さん(仮名・30代)は、コロナ禍における市民の「路上飲み」の実態を取材。居酒屋などが時短営業に応じ、飲む場所を失った難民のごとき飲兵衛たちが、街の至る所で飲みまくる様子を特集して放送した。

 そんな路上飲みが報じられると「そこまでして飲みたいか」「モラルがない」などの批判が殺到。「以降、路上飲みをする人は減った気がします」と佐藤さんは言うが、彼らが大人しく家に帰り、自室で飲酒を楽しんでいるかといえば、そうではない。

「帰りの電車の飲酒率が格段に上がりました。最初は酒臭いとか恥ずかしいとか思っていましたが、私もついに……」

 都内の通信会社勤務・原田陽子さん(仮名・40代)は、通勤に特急電車を利用している。彼女が、帰宅電車の車中で飲酒率の高さに気がついたのは、昨年の冬以降。特急券を購入し指定席に確実に座れる特急やグリーン車内で酒を飲む人は以前からいたが、週末の夜などはもはや「宴会状態」になっていることもあるという。

「おつまみのさきイカの匂いがする、くらいなら普通。焼き鳥を持ち込んだり、ロックアイスを買ってきてウイスキーの水割りを作る人もいます。最初は嫌だな、と感じていましたが、私も飲みに行けないストレスがあり試しに缶ビールを飲んでみたところ、これが思った以上に良い。乗車している一時間でパッと切り上げられるし、流れる車窓を見ながらボーッと酔える。横に友人でも乗っていたら、私も大騒ぎしちゃいそうです」(原田さん)

 居酒屋を追われ、公園や路上からも追い出された飲兵衛たちは、あらゆるタイミングで「飲酒の機会」を狙っているのかもしれない。都内の巨大商業ビル内で清掃作業員として働く畑島高貴さん(仮名・30代)も、こうした傾向を肌で感じている。

「以前はあり得なかったんですが、コロナになって、ビル内の喫煙所で酒を飲んでいる人を多く見かけるようになりました。別に禁止されているわけではないし、仕事終わりなら問題もないのかも知れませんが……」(畑島さん)

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