久保田さんのコンビニ周辺は商店街もあり、業務スーパーもある。その業務スーパー、べらぼうに安いし詰め放題など激安イベントも盛りだくさんだ。豆腐20円とか、うどん1たま19円とか、100g88円のステーキ肉とか、食パン1斤98円とか、あくまで実例のピックアップだが、産地不明だろうが日本語表記でなかろうが、とにかく日々の食生活が安ければいい、安くしなければならないという人の天国だ。
「1円だって安くしたいって人が押し寄せる店だからね。生活かかってる客だ。さっきの(コンビニ)コーヒーの話だってスタバとかと比較すれば安いって客で、業務スーパーの客とはまた違う。どっちが上とか下とかじゃなく、購買層が違うんだ」
日本が貧しくなってコンビニすら高価格帯になっちゃった
確かに、コーヒーショップで飲むよりコンビニコーヒーは格段に安い。ケチなのかもしれないし、ストレスのはけ口なのかもしれないがスーツ姿のサラリーマンということは、さすがに日々の生活で食い詰めているとか、福祉レベルで困窮している、というわけではないだろう。もちろん業務スーパーの客だってやむなくコンビニを使うこともあるだろうが緊急的なもので、購入単価は低いだろう。そもそもコンビニコーヒーの100円すら、「100円なんて1日の食費」という業務スーパーの一部客からすれば贅沢すぎる。コンビニスイーツなど貴族の嗜好品だ。
「そういう人はコンビニ使わないね。便利って価値が上乗せされてる分、高いもん。むしろレジ袋が有料になって客筋がよくなった気がするよ。揉めることはあるけど去年に比べたら減った。食パンや駅ナカのスイーツに1000円出せる人に比べればコンビニは安いし便利だけど、業務スーパーとかの客にすればコンビニは高いからね」
サービスを有料にしたり単価を上げたりすると客は減る。しかし客のレベルは上がる。「安い客ほど文句が多い」は昔から商売を語る上でよく使われる言葉だが、近年のコンビニは実際、客の質向上にターゲットを置いている。コンビニならではの付加価値に金を出せる層の店、になりつつある。
「コロナ以前からそういう方向性だったけどね、”プチぜいたく”需要ってやつだ」
実際、日本フランチャイズチェーン協会によれば客数は17ヶ月連続マイナスだが、客単価は17ヶ月連続プラス、とくに高価格帯に力を入れていると思われるセブンイレブンは既存店売上高も前年を上回っている(2021年3月営業実績)。客は微減しているが、客単価は上がっているので売上も上回っている。苦戦は事実だが、このコロナ禍を考えれば優等生だ。
「一概には言えないけど、客単価上げたほうがいいからね。とくに都心のコンビニはそう。もちろん変な客はいまだにいるけど、昔に比べれば良くなったんだ。高価格のおかげかもね。いや、日本が貧しくなってコンビニすら高価格になっちゃったのかな」