(写真/時事通信社)

カンヌ国際映画祭では2人で登場(時事通信フォト)

 映画評論家の前田有一氏が、その理由を語る。

「東出さんは『スパイの妻』の前にも、『散歩する侵略者』で黒沢監督作品に出演している。気に入った俳優しか使い続けない監督なので、それだけ東出さんには俳優としてのポテンシャルがあるということでしょう。決して器用な演技派というわけではないし、幅広い役柄をこなせるタイプでもない、それでも起用されるのは素材としての面白さがあるからだと思います。顔立ちがよく、身体も大きく、異物感というか、しっかりとした存在感がある。そういう存在感を持った俳優はなかなかいないし、使う側からすると重宝します。黒沢監督の『スパイの妻』では恋してはいけない人に恋をしてしまう、という実生活を想起させるような危うい役どころでしたが、吹っ切れていたのか、臆することなく演じて、作品にしっかり爪痕を残していました。

 原田真人監督の『関ヶ原』でも小早川秀秋役で敵軍に寝返る重要な役柄を演じていますが、主役でなくても作品の中でキーポイントになるところに出てきて、観客に強い印象を残しています。演技が上手い俳優は数多くいいますが、こと映画の場合は上手いだけだと脇役に収まってしまって、作品の中に埋没してしまうきらいがある。そういう中で東出さんは、スクリーンに登場しただけで、観客の感情を揺さぶる存在感がある。

 今回3年ぶりの主演映画が発表されましたが、そのスキャンダラスのイメージもあり、地上波などでの宣伝活動などもしづらい可能性もあるなかで彼をキャスティングしたのは、それを補って余りあるくらい東出昌大という存在が作品に必要だったのでしょう」

 演技の力で、徐々にマイナスイメージも払拭できるといいのだが。

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