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2021.05.04 15:00  マネーポストWEB

19年待ちもある人気取り寄せグルメの仰天エピソード 亡き娘の注文に涙する母…

注文から17年待ちの食パン。現在、同店の商品を待っている人は2万人以上!

 ネットの発達により、全国各地の名物グルメが自宅に居ながらにして味わえる時代になった。コロナによる外出自粛もあり、自宅で“お取り寄せグルメ”を楽しむ家庭も多いのではないだろうか。そうした中で、全国には注文から到着まで数年もの期間を要する“幻の逸品”が存在する。5月10日発売の『週刊ポスト』では、日本各地の「長待ちお取り寄せグルメ」を紹介。なお、いまから注文してもGWには間に合わないので悪しからず――。

【写真】19年待ちのコロッケ、7年待ちの梅干し、1年半待ちの餃子…「長待ちしてでも買いたい」絶品お取り寄せグルメの数々

「全国から注文が殺到し、現時点では、お届けまで17年以上かかる見通しです」

 そう話すのは、「北鎌倉 天使のパン・ケーキGateau d’ange」(神奈川県)の宇佐美総子さん。夫で店主の多以良泉己さんは、元競輪選手だ。泉己さんに転機が訪れたのは2005年、レース中の事故で脊髄と頸椎、脳を損傷し、一時は命が危ぶまれる状態に陥った。

「事故が起きたのは結婚から5か月後のこと。医師からは『一生歩けない』と言われました」(総子さん)

 その後、奇跡的に歩行が可能になるまで回復した泉己さんだが、体はこれまでのように動かない。先の見えないリハビリ生活の中で始めたのが、子供のころから得意としていたお菓子作りと、「生地をこねる作業がリハビリに効果的」と医師から勧められたパン作りだった。

 思うように体は動かないが、ミキサーなどの機械は一切使わず「手作り」にこだわった。寝る間も惜しみ、試行錯誤の末に完成したケーキやパンをイベント会場で販売すると、たちまち口コミで話題に。2008年にネット通販を開始したところ、徐々に注文が増え始め、メディアでも注目される存在になっていった。

 それから13年。「食パン」(税込1350円)をはじめとするケーキやお菓子など、各種商品の待ち期間は今では17年以上に。毎日、深夜1時から工房に立つ泉己さんだが、体調によっては1週間ほど寝たきりになることもあるという。

「今お待ちいただいている方は2万人以上になりますが、『タイムカプセルのように、到着までの時間を楽しんでいる』と言ってくださるお客様もいます」(総子さん)

 17年待ちとなれば、注文者の生活環境が大きく変わることもある。「なかには、『別れた妻が頼んだものだからいらない』と言われることもあります。また、事故で命を落とした娘さんが頼んでいたパンとケーキが届き、お母様が泣きながらお召し上がりになったというお便りをいただいたこともありました」(総子さん)と、思いもよらぬ出来事に直面することもあるが、日々、購入者から寄せられる感謝の声が夫妻の生きがいになっているという。

◆「今からなら、お子さんか孫の名前で注文して」

 同じく「縁起物」として珍重されるのが、紀州梅専門店『五代庵』が申年に漬ける梅干し『五福』(1粒税込3240)円だ。

「平安時代のある申年に疫病が流行し、当時の第62代村上天皇が病に倒れてしまった。その際、梅干しと昆布茶で病を克服したという言い伝えから、申梅は『無病息災』の縁起物として広く全国に伝わりました。特別なお祝い事や、敬老の日の贈答品としてご購入くださる方が多いようですが、12年ごとにご購入下さるお客様もいます」(広報担当者)

 次回は「戊申年」(2028年)の販売となり、購入できるのは7年先ということになる。ただし、前回「丙申年」の梅干しは現在も購入が可能だという。

 1999年にネット通販を開始した「名産神戸肉 旭屋」(兵庫県)の「神戸ビーフコロッケ『極み』」(5個入り税込2700円)の待ち期間は、現在19年に及ぶ。店主の新田滋氏が打ち明ける。

「14年待ちになった時点で『自分が生きているうちに注文をさばけない』と思い、3年ほど注文を休止にしたんです。でも、再開した途端にこの状況。これから注文される方は、お子さんかお孫さんの名前で頼んでもらったほうがええかも(笑い)」

 精肉店の強みを活かし、厳選された神戸ビーフを惜しみなく使っているため「原価が1個400円ほどかかる赤字商品」と新田さんは言う。「お客さんは『もっと人を雇ってたくさん作ればええやん』と言うが、赤字商品にそんなお金かけられまへんわ」と笑う新田さん。コロッケはあくまでも“販促ツール”のサービス品だという。待ち期間が長いことで、こんな“事件”が発生することも。

「今は約8年前の注文分を発送していますが、お客さんはほぼ100パーセント、頼んだことを忘れていますね。確認の電話を入れたら、ご家族に詐欺グループと間違えられ『警察に通報します!』と言われたこともあった(笑い)」(新田さん)

◆生産量を増やして待ち期間は1年半に短縮

 過去、最大4年半待ちとなった「クロワッサン餃子」(50個入り税込2650円)の「たれ屋」(香川県)は、幾度もの経営危機を乗り越えて全国からの注文が途絶えない人気店となった。

「2006年にアパートの1室で餃子の製造販売を開始しましたが、当時は生活するのも精いっぱい。2年後には貯金を食いつぶす寸前でした」(木内政信社長)

 従業員の給料支払いにも窮する状況だったというが、全国放送のニュースで取り上げられたことをきっかけに業績はうなぎのぼりに。「放送後、3000件の注文が来て2か月待ちになりました。その後も注文が絶えず、待ち期間はどんどん長くなっていきました」と木内社長は振り返る。

 だが、リピート購入を希望する客を特別扱いしなかったことで注文が激減し、月の半分は工場を閉める窮地に立たされることになる。皮肉なことに、注文の殺到が客離れを招いてしまったのだ。

「そこで“ご新規”と“リピーター”それぞれに枠を設けることにしたのですが、やはり生産能力には限界がある。お客様からは『(話題作りのため)わざと作る量をコントロールしているのではないか』と言われることもありました」(木内社長)

 そうした逆境の中、木内社長は大きな賭けに出る。

「借金をして新たな工場を建て、1日5000個だった生産量を約3倍に引き上げたのです。正直なところ『また注文がぱったり途絶えるかもしれない』と思うと、新たな投資は怖かった。でも、かつて働いていた会社の社長に『必要とされているときに売らなければ意味がない』と諭され、決心がつきました」(木内社長)

 品質を保つため、現在の生産量は1日1万2000個。待ち期間は1年半に落ち着いた。

「コロナ禍では受注が通常の4倍になる月もあります。ただ、(2011年の)3.11の震災後に1日の新規注文が1桁になったように、いつ注文が止まるかわからない。毎日ヒヤヒヤしながらやっています。私が餃子で苦労している姿を見ているからか、うちの家族は餃子を食べません(笑い)」(木内社長)

 作り手にも、購入者にもさまざまな人生ドラマがある「長待ち取り寄せグルメ」。長い月日をかけて届いたら、予約・注文した「あの日」に思いを馳せながら賞味するのも一興だろう。

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