コラム

「専業主婦は年金にタダ乗り」の嘘 第3号被保険者に関する大きな誤解

「年収106万円」を超えると厚生年金への加入が必要となる(イラスト/河南好美)

 サラリーマンが長い老後を夫婦で生活していくうえでは、「妻の年金」も重要な要素となる。そこで、パートなどに出ている妻の年金を考える上で重要となるのが「厚生年金の適用拡大」だ。『週刊ポストGOLD 2021改訂版 あなたの年金』より、そのポイントを解説していく。

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 厚生年金に加入して働く会社員の夫を持つ20歳以上60歳未満の主婦の女性は「第3号被保険者」となる。それにより、年金保険料を払っていなくても基礎年金の加入期間として計算される仕組みがある。

 ただし、一定以上の収入があると、第3号被保険者から外れ、自ら保険料を払って厚生年金に加入する必要が出てくる。この加入要件が年々厳しくなってきている。それが「厚生年金の適用拡大」の意味するところだ。

「年金の保険料を払わなくていい範囲で働こうと考えていたのに、どんどんそのハードルが厳しくなっていて困る」(パートで働く40代女性)といった悩みを抱えている家庭は少なくない。

 現行制度では、大企業(従業員501人以上)に勤務する場合は「年収106万円以上(月給約8.8万円以上)」、中小企業(従業員500人以下)だと「年収130万円以上(月給約10.8万円以上)」を稼いだ場合に、夫の社会保険を外れて自分の給料から社会保険料が天引きされることになる。

 これが2022年10月からは従業員101人以上、2024年10月からは従業員51人以上の中小企業に勤務する人でも、「年収106万円」を超えると厚生年金への加入が必要とされるようになる。

「年金財政の逼迫を受け、国は保険料を払わなくても年金が受け取れる第3号被保険者をできる限り減らす方向に舵を切ろうとしています。今後、厚生年金の適用拡大はさらに進んでいくと考えられます」(社会保険労務士・北村庄吾氏)

 そもそも、1985年に第3号被保険者の制度ができた際に、サラリーマンの厚生年金保険料は約2割(保険料率10.6%→12.4%)も引き上げられている。それゆえ、専業主婦が“年金制度にタダ乗り”しているかのような議論は、国によるミスリードであると言わざるを得ない。ただ、政府が制度を変えるというのであれば、国民の側はそれに沿った対策を練る必要がある。

 とはいえ、これまでは年金保険料を天引きされない範囲で働くのが“賢い稼ぎ方”だったのが、その条件がどんどん厳しくなる。であれば、パート妻もむしろできるだけ多く稼いで将来の年金を増やすことに注力する選択も有力になる。夫婦で安心の老後を過ごすうえでのひとつの処方箋となり得るだろう。

※週刊ポスト2021年6月1日号増刊『週刊ポストGOLD 2021改訂版 あなたの年金』より

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