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東洋文庫ミュージアム【3】新聞に描かれた「二本足の魚」に壇蜜驚く

『読書賊』北京近郊に豹革を被った追いはぎが出没した事件を聞き書きで描写している

『読書賊』北京近郊に豹革を被った追いはぎが出没した事件を聞き書きで描写している

 美術史家で明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜。日本美術応援団の2人が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・文京区の東洋文庫ミュージアムの第3回。2人が清の通史を辿る『大清帝国展 完全版』を見て回る。

山下:東洋学の専門図書館・研究所である東洋文庫の優れた資料を通じて清の通史を辿る『大清帝国展 完全版』が東洋文庫ミュージアムで開催されています。

壇蜜:清の最盛期に君臨したのはかの乾隆帝。その最も輝かしい戦果をアピールする『準回両部平定得勝図』は、極めて緻密な絵です。

山下:乾隆帝は美術に関心が高く、作品収集や製作に熱心でした。『準回両部平定得勝図』はイエズス会士の宮廷画家、ジュゼッペ・カスティリオーネ(郎世寧)が原画を手がけたもの。当時の清には銅版画の技術がなく、フランスで製版されて北京へ送られてきました。

壇蜜:海外との接点から洋風の表現で作られたのですね。その約1世紀後に流行した『点石斎画報』がまた独特。「魚異」には二本足の魚が描かれていますよ!?

山下:『点石斎画報』は絵入りの新聞で、「魚異」は朝鮮に犬のような前足のある魚が現われて食べたらお腹を壊した、という記事。海外の記事は聞き書きで絵師の想像で描かれていました。

壇蜜:虚構もあったとはいえ、絵を見ているだけで飽きない。清の世情や庶民の関心が海外へ向いていたことがよくわかりますね。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)。

●東洋文庫ミュージアム
【開館時間】10時~17時(最終入館は閉館30分前まで)※開館状況はHPにて要確認
【休館日】火曜(祝日の場合は開館し、翌平日が休館)、年末年始、臨時休館あり
【入館料】一般900円
【住所】東京都文京区本駒込2-28-21

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年5月7・14日号

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