「人形町噺し問屋」では毎回オープニングで兼好が「あいさつ」と称して立ち姿での時事トークを繰り広げるのだが、それが実に面白く、今回のディスク・オンデマンドにも収められているのが嬉しい。『粗忽の使者』『明烏』は昨年1月横浜にぎわい座での高座だが、こちらの商品にも今年1月の「噺し問屋」での「あいさつ」が特別収録されている。
どの高座も兼好独自の演出が楽しめる逸品だが、アマゾンはディスク・オンデマンド事業に関して「新作登録は今年3月で受付終了、全タイトルの受注を6月4日で停止する」と決定した。つまり、これらのDVDは6月4日までに注文しないと買えないのである。今のうちに“大人買い”しておくことを勧めたい。兼好の他に柳家花緑、桂雀々、六代目三遊亭円楽の商品も入手可能。
竹書房は別のディスク・オンデマンドを検討中で、それまでは新たな配信も保留。再開は公式アカウントで発表される予定だ。
【プロフィール】
広瀬和生(ひろせ・かずお)/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。『21世紀落語史』(光文社新書)『落語は生きている』(ちくま文庫)など著書多数。
※週刊ポスト2021年5月28日号