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先進国の多くで痩身信仰が広がっている

 永田さんによれば、やせていることが美しいとして、減量に執着した最初の女性の1人は、19世紀のオーストリア=ハンガリー帝国の皇后・エリザベートだという。「シシィ」の愛称で親しまれ、宝塚の人気ミュージカルの題材にもなった彼女は、身長172cmながら体重わずか46kg、ウエスト50cmを生涯キープしたといわれる。

「やせることに執着して、過剰に運動して果汁や牛乳ばかりの極端すぎる食生活を続けていたため、胃腸の働きが悪くなり、当時の宮廷医も『異常である』と指摘しています。そこまで美を追求しても幸せにはなれず、暗殺されて一生を終えています」(永田さん・以下同)

 その後、西洋で女性の社会参加が進むとともに、女性の服装は、動きやすくタイトなものに変わっていった。

「第一次世界大戦が終わってアメリカの景気がよくなった時期に、それまでのようなバストとヒップの豊かな“スズメバチ体形”から、バストとウエストの差がないやせ型体形が流行しました。日本では大正デモクラシーの頃にこうした服装が流入し、第二次世界大戦後、国が豊かになるにつれて、欧米のやせ礼賛文化の影響を受けるようになったと考えられます」

 令和の世では、K-POPアイドルの過酷なダイエットが“エリザベートの再来”だと、永田さんは眉をひそめる。彼女たちは、多くが170cm近い高身長でありながら、45kg前後を理想の体重とされ、1日1000kcalほどしか摂らないという。

 実際、TWICEの日本人メンバーであるモモは、所属事務所から「1週間以内に7kg減量しないとショーに出さない」と通告され、1週間氷だけを食べて体重を落としたと、インターネット番組で告白した。

「たとえ歌やダンスが苦手でも、食事さえ摂らなければ、誰でもやせることはできる。自己評価が低くて自分に自信がない人ほど、ダイエットに成功したことを“自己実現できた”と思い込んでしまう」

 そうして、食べて吐くことを繰り返す。その結果、海外のモデルが亡くなった例もある。やせることによる自己実現は、決してポジティブな言葉ではないのだ。

※女性セブン2021年6月3日号

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