生徒募集で苦戦強いられる全国の公立高校
その一方、今年は公立高校入試で衝撃を受けた現象がある。
筆者は仕事柄、毎年2月下旬から3月中旬にかけてはポータルサイトに掲載される地方新聞の公立高校入試の記事をチェックしている。連日、「えっ!」「えっ!」「また!」……と、思わず声が出てしまうような記事が続いた。いくつか挙げてみよう。
【北海道】
道教育委員会によると、すでに合格者が発表された推薦入試を除き、道内の公立高校219校の入学試験の最終的な出願者数は、全日制が募集定員2万7555人に対して2万6565人だった。その結果、倍率は0.96倍になり、去年に続いて1倍を下回って過去最低に。
【埼玉県】
県教育局によると、全日制は入学許可予定者3万6040人に対し、3万9122人が受験した。倍率は1.09倍で前年度比0.03ポイント下落し、2012年以降で最低となった。
【静岡県】
県内の全日制の志願倍率は0.99倍と、現在の入試制度になって初めて1倍を下回り、過去最低となった。
【山口県】
公立高校入試の志願者数が発表された。全日制の倍率は1.10倍で過去10年で最低に。
【愛媛県】
愛媛県教育委員会によると、全日制の県立高校52校の入学試験の志願者は少子化の影響もあり定員9145人に対して7554人だった。最終の志願倍率は0.83倍と過去最低になり、7年連続で定員を下回った。106の学科のうち85の学科が定員割れに。
北から南まで連日こんな報道が続いた。なぜこんなことになっているのだろうか。以下の5つの要因が考えられる。
(1)少子化に合わせて学校数を減らしたいができない
15歳人口の減少に応じて高校の統廃合を進めたいが地元の反対でできない。
(2)学費面での優位性がなくなる
国の「就学支援金」に加え、各自治体が授業料助成をしていることで、私立高校の授業料無償化が進み、経済負担の面での公立高校の優位性が小さくなっている。
(3)付属校志向の高まり
これは都市圏での話だが、大学の入学定員の厳格化で合格発表数が減少して有力私大が軒並み難化したことにより付属校を目指す生徒が多くなり、私立高校に流れた。
(4)通信制志望が増加
以前は全日制に合格できなかった受験生が4月になって通信制に入学というパターンが普通だったが、近年は最初から通信制志望というケースが出てきている。
(5)学区撤廃による人気・不人気の格差拡大
先に触れたように現在約半数の県が学区を撤廃しているが、そうなると人気校には全県から受験生が集まる一方で、地元の受験生もよそへ行き定員が埋まらない高校が生まれる。
以上のことが複合的に絡み合って過去最低の倍率をもたらしたとみていいだろう。このように多くの公立高校が生徒募集面で苦戦を強いられる状況が生まれているのだ。