在宅介護に近い負担額で収まるのが多床室型の特養になるが、前述の通り待機が必要なケースが多いうえに、1部屋に2~4人が入居するタイプとなる。
「一度、入居したら同じメンバーと長期にわたって“ルームメイト”になるため、相性がいいかという問題が出てきます」(横井氏)
もう少し蓄えがあるなら、同じ特養でもある程度そうした問題が解消される「ユニット型」が選択肢に入ってくる。10人程度のグループを一つの生活単位として風呂やリビングなどを共同利用するが、居室は一人ひとり独立している。
ユニット型もすぐには入れないことがあるので、一時的な入居先として「介護付きケアハウス」も候補になる。
「ユニット型の特養と同程度の負担で利用できる公的施設です。基本的に自立した生活が送れる人を対象にした施設ですが、今では看取りに対応するところもあります」(前出・佐藤氏)
グループホームを追い出される
750万~1000万円の貯蓄があれば、「グループホーム」か「サ高住」が選択肢に含まれるようになる。
「認知症がある場合、グループホームなら手厚いケアが期待できます。専門スタッフによる介護を受けながら、できることは自分でやりながら共同生活を送ります。施設によって初期費用や月額費用に差があるが、概ね入居金15万円+月額12万~18万円ほど。にぎやかな雰囲気が好きな人に向いています」(佐藤氏)
ただし認知症の進行により暴力や騒音などの問題行動が生じ、共同生活に支障をきたしたら退去を求められることがある。
同水準の負担額で入れるサ高住は、医療・介護サービスと連携し、入居者の自由度が高いのが特徴だ。
「サ高住は様々なサービスをオプションで受けられる“高齢者向けのマンション”と言えます。月10万~20万円の利用料で、入居金として2か月分を払うケースが多い。なじみのケアマネジャーを選んでケアプランを考えてもらえる施設もあります」(佐藤氏)
特養待ちで入居したサ高住が「終の棲家」になったというケースもある。全国でサ高住を運営する「学研ココファン」広報の西尾彩氏が語る。
「特養待ちの方が施設を気に入り、『私はこのままここにいたい』と残るケースが少なくありません。特に認知症の場合、施設を移ることで症状が悪化する『リロケーションダメージ』を防ぐためにも、一時的に住む予定だったサ高住に永住されるケースもあります」
医療・介護・生活支援などが十分に受けられる有料老人ホーム(有料)に入りたいなら、1500万~2000万円の貯蓄が目安になる。
有料は職員が介護サービスを行なう「介護付き」と、訪問介護・看護を利用する「住宅型」に大別される。
「介護付きホームの場合、入居者3人に対して介護または看護スタッフ1人の人員配置が法的に義務づけられており、入居者は安心できます」(佐藤氏)
民間の施設となるので費用は“ピンキリ”だ。
「上は億を超えますが、都内では入居金300万円で月額利用料20万円ほどの施設が一般的です。要介護3とすると、月額利用料以外に介護保険サービスの自己負担分、おむつ代、医療費・薬代などを合わせて月5万円ほどがプラスされます」(佐藤氏)
高級タイプになると、入居費用だけで数千万円かかり、豪華なエントランス、レストラン、コンシェルジュ付きといった高級ホテルのような施設まである。その場合は最低でも6000万円以上の貯蓄額が必要となり、多くの人の選択肢には入らないだろう。