八五年の『必殺仕事人V』(朝日放送)から、殺し屋「花屋の政」役で出演。「必殺」シリーズにレギュラーで参加するようになり、人気を博する。
「松竹のプロデューサーが『タンジー』を観に来てたらしいんですよ。それで決まったと聞きました。
ただ、あの頃は『時代劇は嫌だ』と思ってたんです。岩手の漁師町で育った僕にとって、田舎を強く感じさせるものが演歌と時代劇でした。それにチョンマゲに中剃りも、『あんなものは嫌だ!』とずっと思っていましたから。
ところが、レギュラーが決まってプロデューサーに会った時、こう言われたんです。
『時代劇をやる必要はない。村上君は現代人が江戸時代にタイムスリップした感じでやればいいから』と。
それを聞いて、『やったー!』と思いましたね。アクションは『仮面ライダー』でさんざんやってたんで、自信がありましたから。自分の得意分野にめぐりあったという感じがして、すっと『必殺』に入っていくことができました」
【プロフィール】
春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。
撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2021年6月11日号