宮崎あおい

北斎の娘で自身も絵師であるお栄を演じたことのある宮崎あおい

 画家を主人公にした作品が注目される理由はいつくかある。第一は、実在した主人公や周囲のキャラの面白さだ。『HOKUSAI』にも、自分で「画狂人」と名乗った北斎だけでなく、絵師の才能を見出すプロデューサー蔦屋はじめ、「おめえの描く絵には色気がねえ」と言い放ち、北斎を凹ませる喜多川歌麿(玉木宏)、身分を隠すサムライ絵師・柳亭種彦(永山瑛太)、北斎と組む作家・滝沢馬琴、しれっと天才ぶりを見せつける東洲斎写楽など、くせ者が大集合。そのクリエイターたちが、幕府の圧力で製作を禁じられる。それでも彼らは諦めない。その反骨精神、心意気が気持ちいい。

 第二には、驚くべきエピソードがいっぱいでネタには困らないこと。特に北斎は、片付けるのが面倒だからと(?)引っ越し93回、発表した作品が3万点! しかも、後期高齢者になってから本気でエンジンかけた感じで、江戸からスポンサーのいる小布施まで往復4回(移動距離2000キロ)して創作を続行。「富嶽三十六景」など超人気シリーズを世に出しながら、80歳にして「猫一匹も満足に描けない」と語り、90歳で天に召される直前、「吾れに十余年の寿命があれば」「五年でもよいから生きられたら本物の画工になれたのに」とつぶやいたという。北斎先生、おそるべし。

 第三の理由は、映像技術の進歩でアートをテーマにした作品がより鮮明に美しく表現できるようになったことだ。『HOKUSAI』でも、絵画はもちろん、粋で贅沢な座敷のセット、町人たちの鮮やかなファッション、愛娘を笑わせるための北斎の顔の落書きまで、江戸の美と遊び心は見て飽きない。

 2020年には日本のパスポートのデザインに採用され、2024年には新紙幣にも取り入れられる北斎。政治の圧力に屈しないで生き抜いた「画狂人」は、令和の日本にも大きな影響を与え続ける。痛快だ。

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