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2021.06.04 16:00  マネーポストWEB

入居一時金1000万円の老人ホーム 半年で退去で500万円返却の現実

退去時に戻ってきたお金が少ない…(イメージ)

「終の棲家」として選んだはずの介護施設でも、そこで最期まで暮らせるとは限らない。千葉県の有料老人ホームに入居していた80代男性は、施設の“スペック”が合わなくなり、退去させられた。男性の長男(58)が説明する。

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「父は嚥下能力が下がり、入居して半年で点滴(静脈栄養)が外せなくなりました。そうすると、『当ホームでは看られません』と言われ、退去することになってしまいました……」

 介護評論家の佐藤恒伯氏が解説する。

「『医療依存度が高くなる』、『認知症が悪化して問題行動が増える』といった場合に退去させられるケースがあります。

 有料老人ホームは、看護・介護スタッフどちらかを、入居者3人に対して1人の割合で配置することが義務付けられていますが、24時間看護師が常駐している施設は基本的に高級ホームです。一般的なホームでは看護体制が間に合わなくなり、退去させられることはよくあります」

 問題はそれだけではない。「返金されると思っていた入居一時金のほとんどが戻ってこなかった」と男性の長男が嘆く。

「入居一時金として父の虎の子の貯蓄から1000万円も払ったのに、戻ってきたのは500万円だけでした。入居してたった半年で半分も償却されるのは、納得がいきません」

 介護アドバイザーの横井孝治氏が解説する。

「入居一時金は『家賃(月額利用料)の先払い』という側面があり、安ければその分家賃が高くなり、高額なら家賃が安くなる。概ね5年間で入居一時金が償却されます。

 しかし、最初の3か月間で20~50%を償却するホームも多く、この男性のように“1年も利用していないのに、退去時に戻ってきたお金が少ない”というケースが少なくありません」

◆食事がまずすぎて…

 せっかく高いお金を出して入居した有料老人ホームを退去することになれば、資金面だけでなく、精神的なショックも大きくなる。そういった落とし穴を避けるためには、どうしたらいいのか。

「事前に“ホームの限界”を知っておくことが大切です」

 前出の佐藤氏はそうアドバイスする。

「たとえば『認知症でも安心』などと謳っていても、“すべての認知症に対応可能”というわけではありません。問題行動が目立つようになると、退去させられる可能性が高くなる。

 入居を検討する段階で、どこまでケアしてくれるのかをしっかり詰めておくことが重要です。事前に面倒を見てもらえるギリギリの水準を知っておけば、本人がその限界に近付きつつある時に、引っ越し先を探すなど先回りして対策を考えることができます。いきなり退去を打診されるよりは、ダメージが限定的になります」

 さらに、「ホームの経営状態にも目を配りたい」と、前出の横井氏は指摘する。コロナ禍で介護施設も厳しい経営環境に追い込まれている。

 東京商工リサーチの調査によると、感染の恐れから利用が控えられたり、相次ぐ職員の離職などで昨年の介護事業者の倒産、休廃業の件数は過去最多にのぼった。

「有料老人ホームが倒産し、運営母体が変わってサービスが低下したというケースがあります。『以前より食事がまずくなった』『以前は職員による病院への付き添いがサービスに含まれていたが、有料になった』といった話をよく聞きます」(横井氏)

 もちろん、入居する施設の経営状態を見極めるのは難しい。では、どうすればいいのか。

「信頼できる施設の仲介業者を見つけるのが手っ取り早いですが、まずは複数の施設を見学しましょう。可能なら家族が夜間に宿泊してみるといいでしょう」(横井氏)

 カネがあっても、十分な介護を受けられるとは限らない。積極的な情報収集が重要になる。

※週刊ポスト2021年6月11日号

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