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分け隔てなく接した石原裕次郎さん 宴席では自身がお酒を注いで回った

誰にも分け隔てなく接した石原裕次郎さん(写真/共同通信社)

誰にも分け隔てなく接した石原裕次郎さん(写真/共同通信社)

 日活の看板俳優だった石原裕次郎が独立し、石原プロを設立したのは1963年のことだった。1968年公開の映画『黒部の太陽』が大ヒット。1972年にはテレビに進出し、『太陽にほえろ!』『大都会』(日本テレビ系)、『西部警察』(テレビ朝日系)など人気ドラマを次々と世に送り出した。

「石原プロは裕次郎さんあっての事務所だった。みんな裕次郎さんを尊敬していたし、渡哲也さんも自分を殺して石原プロのために尽くしていた。それほど裕次郎さんは慕われる人柄だった」

 こう語るのは『太陽にほえろ!』のプロデューサーを務めた岡田晋吉氏である。「軍団」と称されるものの、石原プロは「ファミリーそのもの」(同前)だったという。

「渡さんが日活に入ったばかりの頃、日活の食堂に裕次郎さんがいたので、緊張しながら『新人の渡哲也です』と挨拶したら、裕次郎さんは食事の手を止め、わざわざ立ち上がって『石原裕次郎です。頑張ってください』と言って握手し、激励してくれたそうです。当時は後輩は直立不動、先輩は座ったままというのが普通。スーパースターが新米にそこまでしてくれたことに、『すごく感激した』と渡さんは言っていました」(同前)

 裕次郎は「軍団」を率いる立場で、誰にも分け隔てなく接した。石原プロの“炊き出し”は広く知られているが、岡田氏にはこんな思い出もある。

「石原プロは郊外の調布にあったから、みんなで外で料理して食べていた。私も石原プロを訪れるたびに、カレーや焼きそばを振る舞われました。たまたま食事を済ませてお腹いっぱいでも、断われる雰囲気じゃないから無理やり食べたよ(笑い)。

 テレビ局の人も同じ作品を作る仲間だ、同じ気持ちでやろう、と。宴席では、裕次郎さん自身がお酒を注いで回ったりしていましたね」(同前)

 そんな裕次郎を敬い、慕う気持ちから、神田正輝、舘ひろしといったメンバーが自然と「軍団」の結束を強固にしていったのである。岡田氏がさらに続ける。

「怪我で片手が使えない時や39℃の熱を出した時、マネージャーは『休む』と言っているのに、出番があれば本人は来てくれた。一所懸命で、誰よりも汗を流す。一緒に仕事をしたら、すぐにファンになっちゃうよ(笑い)」

 裕次郎亡き後は、彼に惚れ抜いていた渡が石原プロを支え続けた。その渡も2020年8月に他界し、石原プロは今年1月に解散した。俳優が経営する制作会社がこれほど長く続いたのは異例中の異例だ。

※週刊ポスト2021年6月11日号

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