井上信治・消費者担当大臣(時事通信フォト)

井上信治・消費者担当大臣(時事通信フォト)

「免疫を司る器官」を整える

 ならば「免疫力」を高めようとすることに意味はないのか。

「免疫力を高めるという言い方ではなく、『免疫を落とさない』『免疫の機能を維持する』が正しい。適度な栄養、適度な運動、適度な睡眠によって免疫のバランスを維持することが、健康には一番いいんです」(前出・谷本医師)

 とはいえ、食事ひとつとっても、ドラッグストアに並ぶ健康食品のみならず、肉や野菜などふだん口にする食品まで「〇〇が免疫力に効果」などとメディアで取り上げられており、つい手にしてしまう。消費者が意識すべきことはなにか。免疫に詳しい順天堂大学医学部特任教授の奥村康氏はこう言う。

「特定の何かに偏るのではなく、肉も魚も野菜もバランスよく何でも食べることが大事です。50歳以降は粗食になりがちなので、むしろ肉や魚などたんぱく質をしっかり摂る。ただし、満腹状態を続けて血糖値を常に高くしてしまうと糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まり、免疫が下がることにつながりかねない。だから、ゆっくり食べて腹八分目で抑えることが重要です」

 そのなかでも、納豆やヨーグルトがいいとされているのには理由がある。

「腸内には体内にある免疫細胞の7割が集まっていて『腸管免疫』と呼ばれている。小腸にまで届いた病原菌などは、腸壁にあるパイエル板という免疫組織に取り込まれます。納豆の納豆菌やヨーグルトの乳酸菌やビフィズス菌は直接免疫に働きかける食品ではありませんが、腸内環境を整える働きがあるとされています」(前出・秋津院長)

 つまり、「免疫力を高める」のではなく、「免疫力を司る器官を整える」というのが正しい理解のようだ。キノコにも同様の働きがあるとされる。

「キノコに含まれるβグルカンには免疫細胞の1つで体内のがん細胞やウイルス感染細胞を見つけるNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化させる働きがあります。まだ研究途中ですが、シイタケに含まれるβグルカンについてはがん予防の効果があるという報告もある。ただし、そればかり食べ続けるのはダメです」(前出・奥村氏)

 ビタミンDは免疫細胞のカテリジンやβ―ディフェンシンを作り、インフルエンザなどのウイルス感染症に効果があることが分かっているが、こちらも摂りすぎには要注意だ。

「ビタミンDは脂溶性なので、体の脂肪に溶け込んで蓄積され、極端な例では臓器障害にも発展しかねません。日光に当たればビタミンDは自分の身体で作れるので、30分前後の日光浴を勧めます」(前出・谷本医師)

 サプリによる特定栄養素の過剰摂取は海外でも重大な健康被害が報告されている。

「βカロテンは緑黄色野菜に含まれる成分ですが、抗酸化作用があり肺がんを減らせるのではないかと関心が高まり、サプリメントで補う人が増えました。しかし、欧米での追跡調査では、サプリメントによりβカロテンを多く摂取すると、肺がんリスクが20~30%程度上昇するという結果が報告されています」(前出・左巻氏)

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