コラム

39才で医学部合格、53才で医師免許取得の女性「分数から学び直した」

勉強ノートは主に見やすいB5サイズのものを使用していたという

 人生100年時代。50代や60代になっても、まだまだ学ぶことはできる。なかには、50代を超えてから難関試験に挑戦する人もいるのだ。いったいどんな方法で勉強し、高いハードルを超えたのだろうか。3児の母から53才で医師となった前島貴子さん(56才)にその極意を聞いた。

【写真・表】39才で医学部合格、53才で医師免許取得した前島さん。その歩みと勉強術のまとめも

 39才で医学部に合格。53才で医師免許を取得し、現在、産婦人科の医局で働く専攻医の前島さんは、「医師になるまでの私は、決して成績優秀ではありませんでした」と語る。

「高校1年生で両親が離婚しましたが、小・中学生の頃の私は精神的に“うつ状態”で、勉強もほとんどしませんでした。特に理科と数学は、中学校で習う基礎的なことがまったく理解できておらず、学校の成績も常に学年で下の方。唯一、英語は好きだったのと、上京したかったので、東京の短大の英文科に進学しました」(前島さん・以下同)

 卒業後は東京で一般企業に就職。25才で故郷の島根県に帰り、母親が経営する薬局を手伝いながら、お客さんと接するうちに、心身を病む人を救いたいと思うようになった。臨床心理士を目指して勉強を始めたが、その直後に父親が自ら命を絶ってしまう。

「父を救えなかったことが悔しくて、自ら死を選ぶような人をなくしたい、患者を心身ともに支えたいという思いから、医学部受験を決意しました。ただ、医学部受験に必要な理数系の知識は中学生以下。まず、中学校で習う分数の計算問題からやり直しました」

 心機一転、実家の近くの学習塾に通い始める。

「そこは大人も対象にしており、塾長さんが作った数学のプリントを徹底的に解くことを繰り返し、なんとか1年で中学の基礎はマスターしました。中学の基礎からやり直したことで、応用が利くようになりましたね」

 本格的に医学部受験を目指すべく34才で大手予備校に入り、そこで知り合った10才年下の男性と翌年に結婚。36才のときには長女を出産する。

「主人は勉強が得意だったので、予備校に通いながら、彼からいろいろと教えてもらえたことも大きかったですね」

 その後、39才で長男を出産。同年、ついに医学部に合格。

「でも、大学で進級することは想像以上に厳しく、何度か留年してしまいました。特に3番目の子(次男)を産んだ後は試験に失敗し続け、2年留年。結局、卒業するのに9年かかりました」

 在学中は、公園に子供を連れて行くときも家事をするときも、テキストは肌身離さず持ち歩き、目を通していた。

「問題を暗記するまで繰り返し解きました。一冊丸ごと頭に入れることで“どんな問題が出ても大丈夫”という自信にもなりました」

 だが、勉強は受験で終わりではなかった。

「特に医学部時代、頭に入れたことは必ず誰かに説明していました。たとえば『糖尿病はこんな症状があって、どういう治療がある』など、家族や友人に説明することで、頭の中が整理され、さらに頭の中に叩き込まれる。この繰り返しが、重要だと思います」

【プロフィール】
前島貴子さん/1965年3月、島根県出身。「目の前にいる患者をなんとか救いたい」という信念のもと、7浪の末、医学部に合格。53才で医師免許を取得。2021年から愛知県内の病院に勤務。家族は、塾を経営する夫(45才)と19才の長女、17才の長男、13才の次男。

取材・文/廉屋友美乃

※女性セブン2021年6月17日号

関連記事

トピックス