「“俳優は賢くなければダメだが、馬鹿なところもそれでいい”という広さがあった」(宇梶)

「“俳優は賢くなければダメだが、馬鹿なところもそれでいい”という広さがあった」(宇梶)

 教師も親も警察も、ダメだといって抑えつけてきて、こっちは抑えつけられるほど反発する。だけどオヤジは「そこで考えろ」と言ってくれたんです。納得がいかないなら暴れることもできるけど、その責任は自分で負う。つまり、俳優の道を失うことになる。“お前にとって何が一番大事なんだ?”と。

 その後の俳優人生でも、テーブルをひっくり返したくなった時には、必ずオヤジのこの言葉が頭に浮かびます。

 オヤジはよく本を読み、映画も半端なく観て勉強していた。頭を指さして「ここも磨いておかなきゃダメだ」と言っていました。

 そんなオヤジのところにいたのは2年足らずです。美輪明宏さんの舞台に魅了され、「舞台に挑戦するので事務所を辞めたい」と率直に告げると、オヤジは「そうか、うん。離れていってもお前は弟子だからな。いつでも顔を出せ」と言って送り出してくれた。

 本当に広くて大きな人でした。

※週刊ポスト2021年7月2日号

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