国内

池袋暴走死傷事故・飯塚被告の“記憶違い”の写真  

松永さん一家の幸せな日の思い出。犠牲になってしまった妻・真菜さんと長女・莉子ちゃんと春のお花見。(松永さん提供)

松永さん一家の幸せな日の思い出。犠牲になってしまった妻・真菜さんと長女・莉子ちゃんと春のお花見。(松永さん提供)

 ここに4点の写真がある。春のお花見、夏祭り、秋の紅葉狩り、冬の温泉旅行――親子3人の笑顔があふれる。

夏には真菜さん・莉子ちゃんと夏祭りへ。(松永さん提供)

夏には真菜さん・莉子ちゃんと夏祭りへ。(松永さん提供)

 これは、2019年4月19日に起きた池袋暴走死傷事故(高齢者が運転する車が次々と通行人をはね2人が死亡、9人が重軽傷)で命を奪われた松永真菜さん(当時31才)と莉子ちゃん(当時3才)、そして遺族となった松永拓也さん(34)の幸せな日々に撮影した家族写真だ。

秋の紅葉が美しいワンシーン。この笑顔は二度と戻らない。(松永さん提供)

秋の紅葉が美しいワンシーン。この笑顔は二度と戻らない。(松永さん提供)

冬には家族で温泉へ(松永さん提供)。これら4点の写真は、松永さんが証拠資料として検察に提出した写真の一部。全てに詳細も記載されていた。

冬には家族で温泉へ(松永さん提供)。これら4点の写真は、松永さんが証拠資料として検察に提出した写真の一部。全てに詳細も記載されていた。

 6月21日、初めて遺族である松永拓也さんが被告人質問に臨み、運転していた旧通商産業省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(90)=自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われ公判中=と法廷でこのようなやりとりをする場面があった。

<松永さん> 亡くなった私の妻と娘の名前を言えますか。

<飯塚被告> まなさんとりこさんです。

<松永さん> 漢字で書くとどういう字ですか。

<飯塚被告> 「真」という字に、記憶は定かではないが、菜の花の「菜」。りこさんは難しい字なので書いてみることができない。申し訳ありません。

<松永さん> あなたは裁判の中で、一度も妻と娘の名前を言っていないのですが、理由は何ですか?

<飯塚被告> 今までそういう機会がなかったと思っております。

<松永さん> 証拠の中に生前の妻と娘の写真が複数枚ありますが見ていますか?(=編集部註・冒頭の4点を含む写真)

<飯塚被告> はい、拝見しました。

<松永さん> どんな写真でしたか?

<飯塚被告> 家族でご一緒の楽しそうな写真だったと思います。

<松永さん> 具体的には?

<飯塚被告> 例えば、クリスマスの時にお菓子を片手にとっていた写真があったような。

<松永さん> その写真を見てどう思いましたか?

<飯塚被告> かわいい方を亡くしてしまって、ほんとうに申し訳ないと思っています。

<松永さん> 他に覚えている写真はありませんか?

<飯塚被告> はい、3人で撮られた遊園地だかプールだったか覚えていませんが、楽しそうな写真を拝見したと思っています。

 この日の第8回裁判を終えて、松永さんはこう語った。

「命を奪った人間の名前が難しいんですか。証拠として提出した写真にクリスマスのものも遊園地のものもありません。写真に番号を貼り、その番号に写真の詳細を書いて提出したので、しっかり見ていれば間違えようがないです。残念ながら、彼の、命に対する認識はその程度だったということです」

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン