「脳梗塞や心筋梗塞の治療に使われる『ワルファリン』は、血液をサラサラにして血栓をできにくくする薬ですが、納豆菌は、薬の作用を阻害するビタミンKを腸内で増やす働きがあります。薬が効かなければ、万が一の事態が生じる恐れもある。ワルファリンを服用している間は納豆を食べるのは避けましょう」
むやみに納豆を食べれば健康になれるわけではないことを心得たい。
ブームの塩麹、甘酒で腸内環境が乱れる
添加物問題は納豆のたれに限らない。ほかにも多くの発酵食品で見受けられる。北村さんが指摘する。
「麹ブームの影響で塩麹や甘酒などがたくさん市販されていますが、加糖ブドウ糖液糖やpH調整剤などの食品や添加物が入っているものもある。本来、腸内環境を整える作用がある発酵食品ですが、これらは腸内の善玉菌を減らし、悪玉菌を増やします。チーズも、乳化剤や安定剤が添加されているものは同じです。私はスーパーやコンビニでこれらの商品を買うとき、発酵食品ではなく“嗜好品”として購入します」
なかでも問題なのがキムチだ。本来、キムチは乳酸菌が豊富に含まれており、腸内環境の改善や美容効果が期待できる食べ物のはずだが、多くの商品はまるで別物だ。
「本場である韓国のキムチは、アミエビの塩漬けを混ぜ込んで長期熟成し、乳酸発酵させて、旨みの強い発酵食品になります。しかし、日本で市販されている多くは“発酵風味”になるような添加物などが入り、発酵促進剤などで発酵期間を短くしている。当然、腸内環境の改善にはつながりません」(北村さん)
ならば、韓国産のキムチを食べれば必ず健康になれるのかというと、絶対とは言いきれない。意外だが、国際がん研究所の調査によると、韓国は世界で最も大腸がん発生率が高い国の1つと報告されている。
「韓国のキムチも、必ずしも正しく発酵させているとは限らない。さらに、輸入キムチは衛生面の不安もあります。韓国産なら、どの商品でも絶対にいいというわけではありません」(圓尾さん)
本当に発酵しているキムチは、日が経つと発酵が進んで酸っぱくなるのが特徴だ。産地の表示だけに頼るのではなく、しっかり成分表示を確認し、自分の舌で見極めたい。
ヨーグルトは安い方が信頼度が高い場合も
コロナ禍に「免疫力を上げる」として注目されたのが、発酵乳の一種であるヨーグルトだ。「乳酸菌に選ばれた男」こと、乳酸菌製品の開発を行うH&J代表の中村仁さんが解説する。
「いまは、どのメーカーも独自の作用がある乳酸菌を見つけ出し、オリジナルの名前をつけて差別化するのが主流です。さらに、コロナ禍にあって、整腸作用だけでなく、『免疫に効果がある』と打ち出すのがブームです」
こうした、特別な効果が期待されるヨーグルトは「機能性ヨーグルト」と呼ばれ、一般的なプレーンヨーグルトより栄養素の種類が豊富なことも多い。ビタミンやミネラル、食物繊維などの高配合が売りのヨーグルトをはじめとした乳製品を食べて、1日分の栄養を補給した気になるかもしれないが、日本では成分表示通りに栄養素が配合されていなくても合法になる。中村さんが続ける。